はじめに
公務員試験を目指す皆さん、志望先の自治体研究は進んでいますか?
面接官は「なぜ北海道庁なのか」を見抜きます。単なる憧れではなく、北海道という広大なフィールドで何を成し遂げたいのか、具体的なビジョンを持つことが合格への鍵です。
私自身、北海道庁で10年以上勤務していますが、全国最大の面積を誇る自治体ならではのスケール感と、一次産業から観光、防災まで多岐にわたる政策領域の広さに日々やりがいを感じています。この記事では、現役職員の視点から北海道庁の組織体制、仕事の特徴、採用試験対策まで徹底的に解説します。志望動機作成のヒントとして、ぜひ最後まで読んでください。
北海道庁の基本情報と組織概要
北海道庁は全国で唯一の「道」という行政単位を持ち、その規模と特殊性において他の都府県とは一線を画す自治体です。
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 人口 | 約510万人(全国8位、ただし減少傾向) |
| 道庁所在地 | 札幌市 |
| 面積 | 83,424km²(全国の約22%、日本最大) |
| 職員数 | 約26,000人(知事部局約9,000人、教育庁約13,000人、警察本部約4,000人) |
| 予算規模 | 一般会計約2.8兆円 |
| 総合振興局・振興局 | 14振興局体制(札幌、石狩、後志、胆振、日高、渡島、檜山、上川、留萌、宗谷、オホーツク、十勝、釧路、根室) |
地理的特徴
北海道は東京都の約38倍という圧倒的な面積を持ち、気候も地域によって大きく異なります。道南は比較的温暖ですが、道北・道東は厳寒地帯。この広域性が北海道庁の業務の最大の特徴です。札幌の本庁だけでなく、14の総合振興局・振興局が地域の実情に応じた政策を展開しており、職員は本庁と振興局を行き来しながらキャリアを積んでいきます。
現役職員Aさん(入庁8年目・産業振興部門)のコメント
「北海道庁の魅力は、何といってもこのスケール感です。私は本庁勤務後、十勝総合振興局に異動しましたが、同じ北海道でも札幌とは全く違う地域課題に向き合うことになりました。十勝では農業振興や6次産業化支援が中心で、生産者と直接対話しながら政策を作っていく醍醐味があります。広域自治体だからこそ、様々な地域の実情を肌で感じられるのが北海道庁の大きな強みだと思います」
北海道庁の業務の特徴
北海道庁の業務は、一般的な都府県業務に加えて、広域自治体ならではの特殊性があります。
主要政策分野
農林水産業振興 北海道は日本の食料基地として、農業産出額・漁業生産量ともに全国トップクラス。スマート農業の推進、担い手育成、6次産業化、輸出促進など、一次産業政策が極めて重要な位置を占めます。
観光振興 年間約5,000万人以上が訪れる国内有数の観光地。インバウンド対策、アドベンチャーツーリズム、DMO支援など、観光を軸とした地域経済活性化が重点政策です。
防災・雪害対策 地震、津波、火山、豪雪など多様な自然災害への対応が求められます。特に冬季の雪害対策は北海道特有の業務です。
過疎・人口減少対策 札幌一極集中が進む一方、地方部では急速な人口減少と高齢化が進行。移住促進、地域コミュニティ維持、公共交通確保など、地域振興政策が重要課題です。
医療・福祉 広域医療体制の確保、医師不足対策、高齢者福祉など、広大な地域における医療アクセスの確保が課題です。
環境・エネルギー 脱炭素化、再生可能エネルギー導入、生物多様性保全など、豊かな自然環境を活かした政策展開が特徴的です。
現役職員Bさん(入庁6年目・環境政策部門)のコメント
「北海道庁では3〜5年で異動があり、幅広い政策分野を経験できます。私は環境部局から観光部局へ異動しましたが、環境と観光を掛け合わせた『サステナブルツーリズム』という新しい視点を持てるようになりました。一つの部署に長くいるのではなく、様々な経験を通じてゼネラリストとして成長できる環境があります。特に若手のうちは、振興局勤務で地域の最前線を経験することで、政策を『現場目線』で考える力が身につきます」
北海道庁の代表的な政策・取り組み事例
面接では「北海道庁の政策をどう見ているか」が必ず問われます。最新の重点政策を押さえておきましょう。
1. ゼロカーボン北海道の実現
2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロを目指す「ゼロカーボン北海道」を推進。豊富な再生可能エネルギーのポテンシャルを活かし、風力・太陽光・バイオマスなどの導入を加速しています。水素社会の実現に向けた取り組みも先進的で、北海道ならではの広大な土地を活用した大規模プロジェクトが進行中です。
2. 食の高付加価値化とブランド戦略
「北海道産」というブランド価値を最大限に活かし、農林水産物の輸出促進、6次産業化支援、HACCPによる衛生管理高度化などを展開。特にアジア市場への輸出拡大は重点施策で、商談会や海外プロモーションを積極的に実施しています。
3. アドベンチャーツーリズムの推進
自然・文化・アクティビティを組み合わせた「アドベンチャーツーリズム(AT)」を新たな観光の柱として位置づけ。2023年には国際サミットを開催し、世界に向けて北海道の魅力を発信しました。従来の観光から一歩進んだ、持続可能で地域に根ざした観光を目指しています。
4. デジタル化・DXの推進
行政手続きのオンライン化、AI・IoTを活用したスマート農業、遠隔医療の導入など、広域自治体ならではの課題をデジタル技術で解決する取り組みを進めています。特に過疎地域における行政サービスの維持にDXは不可欠です。
5. 移住・関係人口の創出
人口減少対策として、移住促進ポータルサイトの運営、お試し移住プログラム、ワーケーション誘致などを展開。コロナ禍以降、リモートワークの普及により北海道への移住・二拠点生活への関心が高まっており、これを好機と捉えた施策を強化しています。
これらの政策は、面接で「北海道のどの政策に関心があるか」と聞かれた際の具体例として使えます。ただし丸暗記ではなく、「なぜその政策が必要なのか」「自分ならどう貢献できるか」まで考えておくことが重要です。
勤務環境・職員文化
異動サイクル
北海道庁では、概ね3〜5年で異動があります。若手職員の場合、採用後数年で振興局勤務を経験するケースが多く、その後本庁と振興局を行き来しながらキャリアを形成していくのが一般的です。振興局勤務では地域に密着した業務を経験できる一方、転居を伴う異動も多いため、ライフプランを考える上で重要なポイントです。
働き方改革の取り組み
北海道庁でも働き方改革は進んでいます。テレワークは部署によって差がありますが、企画・調整業務が中心の部門では週1〜2回程度の在宅勤務が可能です。ただし、窓口対応や現場対応が多い部署では難しい場合もあります。フレックスタイム制度も導入されており、柔軟な働き方を選択できる環境が整いつつあります。
時間外勤務については、繁忙期と閑散期の差が大きいのが実情です。予算編成期や議会期間中は残業が増える傾向にあります。ただし、近年は業務効率化やノー残業デーの設定など、長時間労働是正に向けた取り組みが強化されています。
職員文化
北海道庁の職員文化は、総じて「真面目で協調的」と言えます。広域自治体であり、様々な地域出身の職員が集まるため、多様性を尊重する雰囲気があります。また、振興局勤務では地域との関わりが深く、住民や事業者と近い距離で仕事をするため、コミュニケーション能力や柔軟性が求められます。
一方で、大規模組織ゆえの官僚的な側面もあり、意思決定に時間がかかることや、前例踏襲の傾向が残る部分もあります。しかし、若手職員の意見を吸い上げる仕組みや、政策提案制度なども整備されており、チャレンジする姿勢は歓迎される風土があります。
職員の声(体験談)
職員Cさん(入庁10年目・振興局勤務経験あり)
私が北海道庁を志望したのは、大学時代に道内各地を旅する中で、地域ごとに全く異なる魅力と課題があることに気づいたからです。札幌のような都市部と、過疎化が進む地方部が同じ「北海道」という枠組みの中にあり、それぞれに最適な政策を考えることの難しさと面白さを感じました。
入庁後、最初の配属は釧路総合振興局でした。酪農が盛んな地域で、担い手不足や鳥獣被害対策などの課題に直面。生産者の方々と膝を突き合わせて話し合い、補助事業の活用や関係機関との調整を進めました。「若い職員が本気で考えてくれている」と言われたときは、この仕事を選んで良かったと心から思いました。
その後、本庁の産業振興部門に異動し、現在は道内企業の海外展開支援を担当しています。振興局で学んだ「現場の声を聴く姿勢」は、今も私の仕事の基本です。受験生の皆さんには、北海道という広大なフィールドで何を実現したいのか、具体的にイメージしてほしいと思います。面接では、あなたの熱意と北海道への理解の深さが必ず伝わります。
職員Dさん(入庁5年目・環境政策部門)
私は道外出身で、学生時代に北海道を訪れて自然の豊かさに感動したことが、北海道庁を志望するきっかけでした。「この環境を未来に残したい」という思いから、環境政策に携わりたいと考えました。
入庁後は環境部局に配属され、脱炭素化やエネルギー政策に関わっています。印象に残っているのは、再生可能エネルギー導入促進のプロジェクトです。地域住民、事業者、市町村、そして道庁が一体となって進めるプロジェクトで、調整役としての難しさを実感しました。利害関係者それぞれの立場を理解し、Win-Winの関係を作るための交渉力が求められます。
北海道庁の魅力は、スケールの大きな仕事ができることです。再エネのポテンシャルは全国トップクラスで、北海道発のモデルが全国に広がる可能性があります。若手でも責任ある仕事を任せてもらえる環境があり、成長を実感できます。受験生の皆さんには、「北海道で何がしたいか」を明確にして、面接でしっかり伝えてほしいです。熱意があれば、必ず道は開けます。
給料・年収・福利厚生
初任給(大卒行政職)
| 区分 | 月額 |
|---|---|
| 大学卒 | 約196,000円 |
| 短大卒 | 約175,000円 |
| 高校卒 | 約164,000円 |
※上記は基本給であり、これに地域手当(札幌勤務の場合3%)、扶養手当、住居手当、通勤手当などが加算されます。
平均年収(世代別目安)
| 年齢 | 年収目安 |
|---|---|
| 20代後半 | 約400万〜450万円 |
| 30代 | 約500万〜600万円 |
| 40代 | 約650万〜750万円 |
| 50代 | 約750万〜850万円 |
※上記はあくまで目安であり、職位や手当によって変動します。
主な手当・福利厚生
- 地域手当: 札幌市内勤務の場合、給料月額の3%
- 扶養手当: 配偶者6,500円/月、子1人につき10,000円/月など
- 住居手当: 賃貸住宅居住者は最大28,000円/月(条件あり)
- 通勤手当: 公共交通機関利用の場合、最大55,000円/月
- 寒冷地手当: 冬季(11月〜3月)に支給、世帯構成や地域により異なる
- 期末・勤勉手当: 年間約4.5ヶ月分(年度により変動)
休暇制度
- 年次有給休暇: 年20日(繰越可)
- 夏季休暇: 3日
- 結婚休暇、出産休暇、忌引休暇など特別休暇も充実
- 育児休業制度、介護休業制度あり
福利厚生は公務員として標準的な水準ですが、寒冷地手当など北海道ならではの手当があるのが特徴です。
採用試験の内容
北海道庁の採用試験は、大きく分けて総合土木などの技術職を除き、一般行政職の場合、以下のような流れで実施されます。
試験区分
- 一般行政A(大卒程度)
- 一般行政B(高卒程度)
- 社会人枠
- その他、技術職(農業、林業、水産、土木、建築など多数)
試験内容(一般行政A)
第1次試験
- 教養試験: 知能分野・知識分野(標準的な公務員試験レベル)
- 専門試験: 政治学、行政学、憲法、民法、経済学、財政学など(選択式)
- 論文試験: 政策課題に関する論述(60〜90分程度)
第2次試験
- 個別面接: 2回実施されることが多い
- 適性検査: 性格検査など
倍率の目安
北海道庁の採用倍率は、近年は3〜5倍程度で推移しています。他の道府県と比べると、やや競争率は高めですが、極端に狭き門というわけではありません。特に技術職は、職種によっては倍率が低く、採用されやすい傾向があります。ただし、人気の高い年や区分では倍率が上がることもあるため、油断は禁物です。
面接・論文で問われやすいテーマ
- 北海道の人口減少・少子高齢化対策
- 一次産業振興(農林水産業の担い手育成、6次産業化など)
- 観光振興とインバウンド対策
- 脱炭素・再生可能エネルギー
- 防災・減災対策
- 地方創生・移住促進
- デジタル化・DXの推進
- 医療・福祉(広域医療体制の確保など)
論文試験では、これらのテーマについて「現状分析→課題抽出→解決策提示」という流れで論じる力が求められます。面接では、「なぜ北海道庁なのか」「どの政策分野に関心があるか」「北海道にどう貢献したいか」が深掘りされます。
志望動機を作るコツ(北海道庁編)
北海道庁の志望動機を作る際は、以下のポイントを押さえましょう。
1. 北海道ならではの地域課題に触れる
「地方公務員になりたい」だけでは弱いです。北海道特有の課題——広域性、一次産業依存、人口減少、札幌一極集中、厳しい気候など——に言及し、「なぜ北海道で働きたいのか」を明確にしましょう。
2. 重点政策を盛り込む
北海道庁が現在力を入れている政策(ゼロカーボン、アドベンチャーツーリズム、食のブランド化など)に触れることで、自治体研究をしっかり行っていることをアピールできます。
3. 自分の経験やスキルと結びつける
学生時代の活動、アルバイト、ボランティア、留学経験などと、北海道庁でやりたい仕事を結びつけましょう。「私の〇〇という経験を活かして、△△という政策に貢献したい」という形で具体性を持たせます。
4. 北海道への愛着・関心を示す
道民であれば「生まれ育った北海道に恩返ししたい」、道外出身であれば「北海道を訪れて魅了された経験」などを盛り込むと、熱意が伝わります。
志望動機例文
私が北海道庁を志望する理由は、広大なフィールドで多様な地域課題に挑戦し、持続可能な北海道の未来を創りたいからです。
大学時代、ゼミで地域経済を研究する中で、北海道の一次産業が抱える担い手不足や高齢化の問題を知りました。実際に十勝地方の農家を訪問し、生産者の方々の熱い思いと、同時に抱える厳しい現実を目の当たりにしました。この経験から、「食」という北海道最大の強みを活かしつつ、生産者が持続的に経営できる仕組みを作りたいと考えるようになりました。
北海道庁が推進する「食の高付加価値化」や「6次産業化支援」は、まさに私が関心を持つ分野です。生産者と消費者、そして海外市場をつなぐ架け橋となり、北海道ブランドの価値を世界に発信することで、地域経済の活性化に貢献したいと考えています。
また、ゼロカーボン北海道の実現に向けた取り組みにも強い関心があります。豊かな自然環境を次世代に引き継ぐためには、再生可能エネルギーの導入と産業振興を両立させることが不可欠です。広域自治体である北海道庁だからこそ、スケールの大きなプロジェクトを推進できると考えています。
私は北海道で生まれ育ち、この大地に深い愛着を持っています。北海道庁職員として、地域に寄り添いながら、時代の変化に対応した政策を実行し、全ての地域が輝く北海道を実現したいと強く願っています。
この例文は一つのモデルですが、重要なのは自分の言葉で語ることです。上記を参考にしつつ、自分自身の経験や思いを織り交ぜて、オリジナルの志望動機を作り上げてください。
まとめ
北海道庁は、全国最大の面積を持つ広域自治体として、他にはないスケール感と多様性を持つ職場です。
北海道庁の特徴を整理すると:
- 広大なフィールドでの政策展開(14振興局体制)
- 一次産業、観光、環境など多岐にわたる政策領域
- 本庁と振興局を行き来する異動サイクル
- 地域に密着した現場主義の仕事
- 人口減少・過疎化という全国共通課題の最前線
公務員試験の勉強と並行して、自治体研究をしっかり行うことが合格への近道です。北海道庁のホームページや各種報道、統計データなどを活用し、最新の政策動向を把握しておきましょう。
志望動機を作る際は、「北海道の地域課題」と「自分がやりたいこと」をしっかり結びつけることが大切です。単なる憧れではなく、具体的なビジョンを持って面接に臨んでください。

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