はじめに
公務員を志す皆さん、秋田県についてどれだけ知っていますか?
正直に言います。秋田県庁で働くということは、日本が直面する課題の最前線に立つということです。人口減少率全国ワースト、高齢化率全国トップクラス、若者流出——数字だけ見れば厳しい現実ばかりです。でも、だからこそ面白い。ここで成功した政策モデルは、将来の日本全体の処方箋になり得るんです。
私は秋田県庁で働いて9年目になりますが、入庁前に抱いていた「地味な地方自治体」というイメージは完全に覆りました。確かに華やかさはありません。でも、限られた資源で最大の成果を出すために知恵を絞る毎日は、想像以上にクリエイティブでやりがいがあります。この記事では、秋田県庁のリアルな姿を、良いことも厳しいことも含めてお伝えします。
秋田県庁の基本情報と組織概要
秋田県は、人口減少・高齢化という日本の未来を先取りしている「課題最先進県」です。
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 人口 | 約92万人(全国38位、減少率全国ワースト) |
| 県庁所在地 | 秋田市 |
| 面積 | 11,638km²(全国6位) |
| 職員数 | 約11,000人(知事部局約3,200人、教育庁約5,500人、警察本部約2,300人) |
| 予算規模 | 一般会計約6,500億円 |
| 地域振興局 | 8地域振興局(鹿角、北秋田、山本、秋田、由利、仙北、平鹿、雄勝) |
地理的特徴
秋田県は日本海側気候で、冬は豪雪地帯として知られています。県土の約7割が森林で、白神山地(世界自然遺産)や十和田湖、田沢湖など、豊かな自然環境に恵まれています。県庁所在地の秋田市は人口約30万人ですが、県全体の人口が100万人を切っており、全市町村で人口減少が進行中です。
米どころとして「あきたこまち」が全国的に有名で、日本酒の生産も盛んです。また、比内地鶏、きりたんぽ、稲庭うどんなど、食文化も豊かです。鉱業の歴史も古く、かつては小坂鉱山や院内銀山などが栄えましたが、現在はレアメタルのリサイクル産業などに転換しています。
現役職員Aさん(入庁8年目・人口問題対策部門)のコメント
「秋田県庁で働いていて常に意識せざるを得ないのが、人口減少という現実です。私が入庁した年、県人口は約100万人でした。今は92万人を切っています。たった8年でこれだけ減る。しかも、減っているのは若い世代です。高校卒業と同時に県外に出て、戻ってこない。この流れを止めるのは正直、簡単ではありません。でも、だからこそ挑戦しがいがあるんです。移住促進、若者定着、関係人口創出——あらゆる手を尽くして、何とか持続可能な秋田を作りたい。その思いで毎日働いています」
秋田県庁の業務の特徴
秋田県庁の業務は、人口減少対策を中心軸に、あらゆる政策が展開されています。
主要政策分野
人口減少対策・若者定着 これが秋田県政の最重要課題です。自然減(出生数より死亡数が多い)と社会減(転入より転出が多い)の両方が深刻で、あらゆる部署が人口問題を意識しています。移住促進、UIJターン就職支援、結婚・出産・子育て支援、奨学金返還支援など、総合的な施策を展開しています。
農林業の振興と担い手確保 米どころ秋田ですが、農業従事者の高齢化と後継者不足が深刻です。スマート農業の導入、新規就農者支援、農産物のブランド化、輸出促進など、「稼げる農業」の実現を目指しています。林業も県土の7割が森林という強みを活かし、木材産業の振興に取り組んでいます。
地場産業の振興と企業誘致 日本酒、漆器、曲げわっぱなど伝統産業の継承と、製造業の企業誘致を両輪で進めています。特に、自動車部品、電子部品、航空機部品などの企業誘致に力を入れています。
観光振興・交流人口拡大 白神山地、角館の武家屋敷、乳頭温泉郷、なまはげなど、観光資源は豊富です。インバウンド回復への対応、滞在型観光の推進、DMO支援などを展開しています。
医療・福祉・健康づくり 高齢化率が高い一方で、医師不足や病院の偏在が課題です。地域医療体制の確保、高齢者福祉の充実、健康寿命延伸に向けた取り組みを進めています。
教育・人材育成 若者の県外流出を防ぐため、県内高等教育機関の魅力向上、地元企業とのマッチング、キャリア教育の充実などに取り組んでいます。
エネルギー政策 風力発電のポテンシャルが高く、再生可能エネルギーの導入促進、洋上風力発電の誘致などを進めています。
現役職員Bさん(入庁6年目・地域振興局勤務経験あり)のコメント
「地域振興局に配属されて感じたのは、『現場の深刻さ』です。本庁にいると数字で見ている人口減少が、地域では目に見える形で進んでいます。空き家だらけの集落、後継者がいない農家、閉店するお店——数年前まで賑わっていた場所が、どんどん静かになっていく。正直、無力感を感じることもありました。でも、地域の方々は決して諦めていません。『若い県職員が来てくれた』と期待してくれる目を見ると、何とかしなきゃと思います。県庁の仕事は、地域の最後の砦なんだと実感しています」
秋田県庁の代表的な政策・取り組み事例
面接で問われる可能性が高い、秋田県の重点政策を紹介します。
1. 「第3期ふるさと秋田元気創造プラン」の推進
2024年度からスタートした4年間の県政運営指針です。「人口減少に打ち勝つ『動態バランス』の早期実現」を最重要課題に掲げ、社会減ゼロ、出生数の維持・向上を目指しています。若者の県内定着、移住促進、産業振興、子育て支援など、総合的な人口対策を展開しています。
2. 「秋田県移住・定住促進アクションプラン」
首都圏での移住相談会「”秋田暮らし”はじめの一歩」、移住体験ツアー、移住支援金(最大100万円)、空き家バンクの充実など、多角的な移住促進策を実施しています。特に、若い世代やリモートワーカーをターゲットにした施策に力を入れています。
3. 「あきた未来創造部」の設置
人口減少対策を専門に扱う部署として設置されました。移住促進、若者定着、女性活躍、関係人口創出など、横断的に取り組んでいます。
4. 新エネルギー産業の創出
洋上風力発電の誘致、地熱発電の活用、木質バイオマスの推進など、再生可能エネルギーを新たな産業として育成しています。特に、能代港・秋田港沖での大規模洋上風力発電プロジェクトは全国的にも注目されています。
5. 「秋田県版Society5.0」の推進
人手不足に対応するため、AIやIoT、ドローンなどの最新技術を農業、介護、除雪などの現場に導入しています。スマート農業の実証実験、ドローン配送の実用化など、先進的な取り組みを進めています。
6. 「あきた結婚支援センター」の運営
少子化対策の一環として、AIマッチングシステムを活用した結婚支援を行っています。登録料無料で、県が主体的に婚活支援を行う全国的にも珍しい取り組みです。
7. 日本酒・食文化の海外展開
「SAKE」として世界的に注目される日本酒を、秋田の強みとして発信しています。県産日本酒の輸出促進、海外プロモーション、インバウンドとの連携などを展開しています。
これらの政策は、面接で「秋田県のどの取り組みに関心があるか」と聞かれた際の材料になります。重要なのは、政策の背景にある「人口減少」という課題を理解した上で、自分なりの考えを持つことです。
勤務環境・職員文化
異動サイクル
秋田県庁では、おおむね3〜4年で異動があります。若手職員は、入庁後数年で地域振興局に配属されることが多く、県内8カ所の振興局を経験しながらキャリアを積んでいきます。秋田県は広い県土を持つため、転居を伴う異動も少なくありません。
地域振興局勤務は、地域の実情を肌で感じられる貴重な機会ですが、同時に冬の雪対応や、過疎化が進む地域での業務の難しさも経験することになります。
働き方改革の状況
秋田県庁でも働き方改革は進んでいますが、他の大都市圏に比べるとテレワークの普及はやや遅れています。ただし、コロナ禍を契機に在宅勤務制度は整備されており、部署によっては週1〜2回程度の在宅勤務が可能です。
時間外勤務については、予算編成期や議会期間中は増える傾向にありますが、全体としては「ワーク・ライフ・バランス」を重視する方向性が打ち出されています。ノー残業デーの設定や、早帰り推奨日の設定なども行われています。
職員文化
秋田県庁の職員文化は、「真面目で堅実」という言葉がぴったりです。派手さはありませんが、地道にコツコツと仕事を進める職員が多い印象です。人口減少という厳しい現実に向き合う中で、「何とかしなければ」という使命感を持って働いている職員が多いと感じます。
県民性として「控えめで穏やか」と言われることが多く、職場の雰囲気も比較的温和です。ただし、前例踏襲の傾向や、新しいことへのチャレンジに対する慎重さも残っています。若手職員の意見を聴く場も設けられていますが、実際に政策に反映されるまでには時間がかかることもあります。
また、職員同士の距離が近く、縦のつながりも横のつながりも強いのが特徴です。人口規模が小さい分、顔が見える関係が築きやすい環境です。
職員の声(体験談)
職員Cさん(入庁10年目・UIJターン促進担当)
私は秋田市出身で、大学進学で東京に出ました。正直、卒業後は東京で就職するつもりでした。でも、就活中に地元に帰省したとき、高校時代に賑わっていた商店街がシャッター街になっていて、ショックを受けたんです。「このまま秋田が消えていくのを見ているだけでいいのか」と自問し、秋田県庁を受験することを決めました。
入庁後、最初は農業振興の部署に配属されました。農家の高齢化が想像以上に深刻で、「あと数年で辞める」という声をたくさん聞きました。でも、新規就農者の支援をする中で、「秋田で農業をやりたい」という若者と出会い、希望も感じました。県外から移住してきた20代の女性が、りんご農家として成功している姿を見たときは、本当に嬉しかったです。
現在はUIJターン促進を担当していますが、首都圏での移住相談会で「秋田に戻りたい」という声を聞くたびに、自分の選択は間違っていなかったと思います。人口減少は止められないかもしれません。でも、減少のスピードを緩やかにすること、秋田に戻りたい人をしっかり受け入れることはできる。その積み重ねが、秋田の未来を作ると信じています。受験生の皆さんには、秋田の厳しい現実から目を背けずに、それでも「秋田のために働きたい」という覚悟を持ってほしいです。
職員Dさん(入庁5年目・観光振興部門)
私は県外出身で、大学時代に角館の武家屋敷を訪れて秋田に惹かれました。桜と黒塀のコントラストが美しくて、「こんな素晴らしい場所があるのに、なぜもっと知られていないんだろう」と思いました。観光振興で秋田を盛り上げたいと思い、秋田県庁を志望しました。
入庁後、観光部門に配属されましたが、正直、現実は厳しかったです。観光客は来ても通過してしまう。宿泊してもらえない。お金が落ちない。インバウンドも、東北の中では秋田は後れを取っています。「何をやっても効果が出ない」と感じることもありました。
でも、地道なプロモーション活動を続ける中で、少しずつ成果も見えてきました。台湾からのツアー客が増えたり、SNSで秋田の温泉が話題になったり。特に、「秋田犬」は世界的にも人気で、これを観光資源として活用する取り組みは手応えがあります。
秋田県庁で働くのは、正直ラクではありません。予算は限られているし、人口は減っているし、華やかな成功事例も少ない。でも、だからこそ創意工夫が求められるし、小さな成功でも大きな達成感があります。受験生の皆さんには、「秋田で何ができるか」を具体的に考えて、面接で自分の言葉で語ってほしいです。
給料・年収・福利厚生
初任給(大卒行政職)
| 区分 | 月額 |
|---|---|
| 大学卒 | 約188,300円 |
| 短大卒 | 約167,300円 |
| 高校卒 | 約156,500円 |
※上記は基本給であり、これに地域手当、扶養手当、住居手当、通勤手当などが加算されます。
平均年収(世代別目安)
| 年齢 | 年収目安 |
|---|---|
| 20代後半 | 約380万〜430万円 |
| 30代 | 約480万〜580万円 |
| 40代 | 約620万〜720万円 |
| 50代 | 約720万〜820万円 |
※上記はあくまで目安であり、職位や手当によって変動します。
主な手当・福利厚生
- 地域手当: 秋田市内勤務の場合、給料月額の3%
- 扶養手当: 配偶者6,500円/月、子1人につき10,000円/月など
- 住居手当: 賃貸住宅居住者は最大28,000円/月(条件あり)
- 通勤手当: 公共交通機関利用の場合、最大55,000円/月
- 寒冷地手当: 冬季(11月〜3月)に支給、世帯構成により異なる
- 期末・勤勉手当: 年間約4.4ヶ月分(年度により変動)
休暇制度
- 年次有給休暇: 年20日(繰越可)
- 夏季休暇: 3日
- 結婚休暇、出産休暇、忌引休暇など特別休暇も充実
- 育児休業制度、介護休業制度あり
給与水準は、全国的に見ると平均的ですが、秋田県の物価水準を考えると生活しやすい水準と言えます。
採用試験の内容
秋田県庁の採用試験は、職種によって異なりますが、一般行政職の場合は以下のような流れです。
試験区分
- 行政A(大卒程度)
- 行政B(高卒程度)
- 社会人経験者枠
- その他、技術職(農業、林業、水産、土木、建築など多数)
試験内容(行政A)
第1次試験
- 教養試験: 知能分野・知識分野(標準的な公務員試験レベル)
- 専門試験: 政治学、行政学、憲法、民法、経済学、財政学など(選択式)
- 論文試験: 政策課題に関する論述(60〜90分程度)
第2次試験
- 個別面接: 複数回実施されることが多い
- 適性検査: 性格検査など
倍率の目安
秋田県庁の採用倍率は、近年は3〜5倍程度で推移しています。他県と比べると比較的低めで、採用されやすい傾向があります。特に技術職は、職種によっては倍率が2倍を切ることもあり、狙い目です。ただし、倍率が低いからといって油断は禁物で、しっかりとした準備が必要です。
面接・論文で問われやすいテーマ
- 人口減少対策、若者の県内定着
- 移住促進、UIJターン支援
- 少子化対策、結婚・出産・子育て支援
- 農林業振興(担い手育成、スマート農業など)
- 観光振興、インバウンド誘致
- 地場産業の振興、企業誘致
- 医療・福祉(地域医療体制の確保など)
- 再生可能エネルギーの推進
- 高齢者の生きがいづくり
論文試験では、これらのテーマについて「現状分析→課題抽出→解決策提示」という流れで論じる力が求められます。面接では、「なぜ秋田県庁なのか」「人口減少という課題をどう見るか」「秋田県でどう貢献したいか」が深掘りされます。
志望動機を作るコツ(秋田県庁編)
秋田県庁の志望動機を作る際は、以下のポイントを意識しましょう。
1. 人口減少という現実に正面から向き合う
秋田県を志望する以上、人口減少問題から目を背けることはできません。この厳しい現実を理解した上で、「それでも秋田のために働きたい」という覚悟を示すことが重要です。
2. 具体的な政策や課題に言及する
「ふるさと秋田元気創造プラン」や「移住促進」「農業振興」など、県が力を入れている政策に触れることで、自治体研究をしっかり行っていることを示せます。
3. 自分の経験と結びつける
学生時代の活動、ボランティア、アルバイト、留学経験などと、秋田県庁でやりたい仕事を結びつけましょう。「私の〇〇という経験を活かして、△△に貢献したい」という形で具体性を持たせます。
4. 秋田県への思いを伝える
県民であれば「生まれ育った秋田への恩返し」、県外出身なら「秋田を訪れて魅了された経験」など、個人的なつながりを示すと説得力が増します。
志望動機例文
私が秋田県庁を志望する理由は、人口減少という日本最大の課題に最前線で挑み、持続可能な秋田の未来を創りたいからです。
私は秋田市で生まれ育ちましたが、高校時代の同級生のほとんどが進学や就職で県外に出て、戻ってきませんでした。私自身も大学で県外に出ましたが、帰省するたびに、母校の生徒数が減り、商店街の店が閉まり、地域が静かになっていく現実を目の当たりにしました。「このままでは故郷が消えてしまう」という危機感が、私を県庁職員という道に導きました。
大学では地域政策を専攻し、人口減少対策について研究しました。秋田県が全国最速で直面している課題は、いずれ日本全体が直面する問題です。つまり、秋田で成功した政策モデルは、日本の未来を救う可能性がある。そのフロントランナーとして働けることに、大きなやりがいを感じます。
特に関心があるのは、若者の県内定着とUIJターン促進です。ゼミで移住政策を研究する中で、「仕事・住まい・コミュニティ」の三つが揃うことが定着の鍵だと学びました。秋田県が進める移住支援金制度や、あきた結婚支援センターなどの取り組みに共感しており、私も若い世代が秋田で活躍できる環境づくりに貢献したいと考えています。
また、農業振興にも強い関心があります。祖父が米農家で、子どもの頃から農作業を手伝っていましたが、高齢化と後継者不足の深刻さを肌で感じていました。スマート農業の導入や新規就農者支援を通じて、「稼げる農業」を実現し、若者が農業に魅力を感じる環境を作りたいと考えています。
秋田県は厳しい現実に直面していますが、豊かな自然、誇るべき文化、温かい県民性という大きな財産があります。秋田県庁職員として、地域に寄り添いながら、人口減少に打ち勝つ「動態バランス」の実現に全力で取り組みたいと強く願っています。
この例文はあくまで参考です。大切なのは自分の言葉で、本気で語ること。自分自身の経験や思いを織り交ぜて、オリジナルの志望動機を作り上げてください。
まとめ
秋田県庁は、人口減少という日本最大の課題に最前線で挑む、使命感とやりがいに満ちた職場です。
秋田県庁の特徴をまとめると:
- 人口減少率全国ワーストという厳しい現実
- だからこそ、政策の成功が全国のモデルになり得る
- 農林業、観光、エネルギーなど多様な政策分野
- 本庁と地域振興局を行き来する異動サイクル
- 地域に密着した現場主義の仕事
公務員試験の勉強と同時に、自治体研究も怠らないことが合格への近道です。秋田県庁のホームページ、各種報道、統計データなどを活用し、最新の政策動向を把握しておきましょう。可能であれば、秋田市だけでなく、県内各地を訪れて、地域の実情を肌で感じてください。
志望動機を作る際は、「秋田県の課題」と「自分がやりたいこと」をしっかり結びつけることが重要です。人口減少という厳しい現実から目を背けずに、それでも秋田のために働きたいという本気の覚悟を伝えてください。

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