【現役職員が語る】岐阜県庁の仕事内容｜組織体制・面接対策・試験倍率を徹底解説

はじめに

公務員試験に臨むとき、多くの受験生が見落としがちなのが自治体研究の重要性です。筆記試験の点数がどれだけ高くても、面接で「なぜこの自治体なのか」を説得力を持って語れなければ、最終合格は難しいのが現実です。

私が受験生だった頃、複数の自治体を比較検討する中で痛感したのは、表面的な知識だけでは通用しないということでした。岐阜県庁を志望するなら、「清流の国ぎふ」というキャッチフレーズだけでなく、人口減少や産業構造の変化、防災といった具体的な課題に向き合う姿勢が求められます。

この記事では、岐阜県庁の組織構造から代表的な政策、採用試験の傾向、そして何より現場で働く職員のリアルな声まで、受験対策に必要な情報を包括的にまとめました。岐阜県で公務員として働くイメージを具体的に持てるよう、実践的な内容をお届けします。

岐阜県の基本情報と組織概要

岐阜県は日本列島のほぼ中央に位置し、7つの県に囲まれた内陸県です。北部には飛騨山脈が連なる山岳地帯、南部には濃尾平野が広がり、県土の約8割を森林が占める自然豊かな地域です。

項目	内容
人口	約195万人
面積	10,621.29km²（全国7位）
県庁所在地	岐阜市
職員数	約4,200人（知事部局・教育委員会等含む）
年間予算規模	一般会計約8,500億円

地理的な特徴として、県域が南北に大きく分かれています。美濃地域（南部）は製造業が盛んで名古屋経済圏との結びつきが強く、飛騨地域（北部）は観光業や林業が主要産業となっています。この地域差が政策立案においても重要な視点となります。

産業面では、刃物や陶磁器といった伝統産業に加え、自動車部品や航空宇宙産業などの先端製造業も集積しています。また、白川郷や高山といった国際的な観光地を擁し、インバウンド需要の取り込みも県政の重要課題です。

「岐阜県は南北で全く違う顔を持つ県です。美濃地域では製造業の振興や都市機能の充実が課題となる一方、飛騨地域では過疎対策や観光振興が中心になります。県庁職員として働く面白さは、この多様性にあると感じています。一つの政策でも地域ごとに異なるアプローチが必要で、現場に足を運んで市町村や県民の声を聞くことが何より大切です」（地域振興課・入庁6年目）

岐阜県庁の業務の特徴

岐阜県庁の業務は、県の地理的・産業的特性を反映して多岐にわたります。ここでは主要な分野について解説します。

防災・減災対策

岐阜県は地震や豪雨災害のリスクが高い地域です。特に2018年の西日本豪雨では甚大な被害が発生し、防災・減災対策は県政の最重要課題の一つとなっています。河川整備、砂防事業、避難体制の強化など、ハード・ソフト両面からの対策が進められています。

産業振興・企業誘致

製造業を中心とした産業基盤の強化に力を入れています。航空宇宙産業や次世代自動車関連産業の育成、中小企業の技術支援、スタートアップ支援など、時代の変化に対応した産業政策を展開しています。

観光・ブランド振興

「清流の国ぎふ」をキーワードに、観光資源の磨き上げとプロモーションを強化しています。白川郷や高山の伝統的な町並み、長良川の鵜飼など、独自の観光資源を活かした施策が特徴です。

福祉・医療

高齢化率が全国平均を上回るペースで上昇しており、医療・介護体制の充実が急務です。特に中山間地域での医療アクセスの確保、在宅医療・介護の連携強化などが課題となっています。

農林業振興

森林面積が県土の約8割を占める岐阜県では、林業の成長産業化が重要テーマです。また、飛騨牛や富有柿といったブランド農産物の振興、担い手の確保・育成にも取り組んでいます。

教育・人材育成

Society5.0時代を見据えたICT教育の推進、グローバル人材の育成、特色ある県立高校づくりなど、次世代を担う人材育成に力を入れています。

「県庁の仕事の魅力は、スケールの大きさだと思います。市町村を超えた広域的な課題に取り組めますし、国や他県との連携も頻繁にあります。私は入庁後、商工労働部、農政部、そして現在は環境部門と、全く異なる分野を経験してきましたが、どの部署でも県民生活に直結する重要な政策に関われることにやりがいを感じています。3〜4年のサイクルで異動があるので、幅広い視野を持ったゼネラリストとして成長できる環境です」（環境生活部・入庁9年目）

岐阜県庁の代表的な政策・取り組み事例

岐阜県が現在注力している政策を理解することは、面接対策において極めて重要です。主要な政策を詳しく見ていきましょう。

1. 清流の国ぎふ森林・環境税を活用した環境保全

岐阜県独自の環境税を財源として、森林整備や環境保全活動を推進しています。県民協働による里山林の整備、野生鳥獣対策、環境教育の推進など、豊かな自然環境を次世代に継承するための取り組みです。森林資源の有効活用と防災機能の強化を両立させる施策が特徴的です。

2. 航空宇宙産業クラスターの形成

各務原市を中心に航空宇宙産業の集積を活かし、産業クラスター形成を目指しています。研究開発支援、人材育成、取引拡大支援など、総合的な産業振興策を展開。次世代産業の育成により、地域経済の持続的発展を図っています。

3. 清流長良川の鮎と世界農業遺産

長良川流域の伝統的な鮎漁と水環境保全の仕組みが世界農業遺産に認定されました。この資源を活かした地域振興、観光振興、環境教育などを総合的に推進しています。伝統文化の継承と地域活性化を両立させるモデル事業です。

4. 移住・定住促進「清流の国ぎふ暮らし」

人口減少対策として、都市部からの移住促進に戦略的に取り組んでいます。移住相談窓口の設置、移住体験ツアー、住宅支援、起業支援など、きめ細かなサポート体制を整備。テレワークの普及を追い風に、新しいライフスタイルを提案しています。

5. DX（デジタルトランスフォーメーション）推進

行政手続きのオンライン化、AI・RPAの導入による業務効率化、データを活用した政策立案など、デジタル技術を積極的に活用しています。県民サービスの向上と働き方改革の両立を目指した施策です。

6. 災害に強い県土づくり

流域治水の推進、土砂災害対策、治山事業など、防災・減災対策を強化しています。特に2018年の豪雨災害の教訓を活かし、ハード整備とソフト対策を組み合わせた総合的な防災体制を構築しています。

これらの政策は面接や論文試験で頻出のテーマです。政策の背景にある課題や県民ニーズを深く理解し、自分なりの考えを持っておくことが合格への鍵となります。

勤務環境・職員文化

岐阜県庁での働き方や職場環境について、実態をお伝えします。

異動サイクル

概ね3〜5年程度で異動となるのが一般的です。若手職員は比較的短期間で複数の部署を経験し、県政全般の知識とスキルを身につけます。希望部署への配属を実現するには、自己申告制度を活用するとともに、日々の業務での実績を積み重ねることが重要です。

働き方改革への取り組み

在宅勤務制度、フレックスタイム制度が導入され、柔軟な働き方が可能になっています。ただし、窓口業務や現場対応が必要な部署では、テレワークの活用に制約がある場合もあります。時間外勤務の削減にも組織的に取り組んでおり、定時退庁日の設定や業務の見直しが進められています。

職場の雰囲気

全体として堅実で真面目な職員が多く、県民目線を大切にする文化があります。地域との距離が近いため、現場の声を丁寧に聞き取り、政策に反映させる姿勢が重視されます。一方で、近年は若手職員の意見を積極的に取り入れる風土も育ちつつあり、新しいアイデアを提案しやすい環境が整いつつあります。

研修制度

新規採用職員研修から始まり、階層別研修、専門研修、派遣研修など、キャリアステージに応じた充実した研修制度があります。自治大学校への派遣、民間企業への派遣研修、海外研修なども実施されており、多様な学びの機会が提供されています。

地域勤務の可能性

県庁本庁での勤務だけでなく、県内各地の地域機関（県事務所、保健所、農林事務所など）への配属もあります。地域勤務では現場に密着した業務に携わることができ、県民との直接的な関わりを通じて仕事の意義を実感できます。

職員の声（体験談）

Cさん（商工労働部・入庁4年目）

「岐阜県庁を志望したのは、地元である岐阜県の産業振興に携わりたいと考えたからです。大学で経済学を学ぶ中で、地域経済の活性化には行政の役割が重要だと感じるようになりました。特に岐阜県が進める航空宇宙産業の育成や、伝統産業と先端技術の融合といった施策に魅力を感じました。

入庁後、最初の配属は福祉部門でした。正直、希望とは異なる部署でしたが、今振り返るとこの経験が非常に貴重でした。福祉の現場で県民の生活実態に触れ、行政サービスがどのように届けられるのかを学べたからです。その後、希望していた商工労働部に異動となり、現在は中小企業の経営支援を担当しています。

地域の事業者と直接やり取りする中で、政策が地域経済にどう影響するかを肌で感じられることが、この仕事の醍醐味です。受験生の皆さんには、岐阜県のどんな産業や地域に関心があるのか、具体的なビジョンを持って臨んでほしいです。県政説明会には必ず参加して、職員の生の声を聞くことをお勧めします」

Dさん（県土整備部・入庁7年目）

「私が岐阜県庁を選んだ理由は、防災・減災の最前線で働きたいと思ったからです。大学で土木工学を専攻し、地震や豪雨災害から県民の命を守るインフラ整備に関わりたいという思いが強くありました。岐阜県は地形的に災害リスクが高く、だからこそやりがいのあるフィールドだと考えました。

入庁後は河川管理の部署に配属され、堤防整備や河川改修の計画立案に携わりました。2018年の豪雨災害では実際に被災現場に駆けつけ、復旧作業の調整を行いました。自然の脅威を目の当たりにし、防災対策の重要性を痛感した経験です。現在は砂防事業を担当し、土砂災害から住民を守る施設整備を進めています。

技術職の魅力は、専門知識を活かして具体的な成果物を残せることです。自分が関わった施設が完成し、地域の安全に貢献できることに大きな達成感を感じます。受験生の皆さんには、岐阜県が抱える防災上の課題を理解し、自分の専門性をどう活かせるかを考えてほしいです。現場主義を大切にする県庁の文化は、技術職にとって非常に魅力的な環境だと思います」

給料・年収・福利厚生

岐阜県庁職員の給与水準と福利厚生について説明します。

初任給（大卒程度・行政職）

学歴	初任給（月額）
大学卒	約19万円
短大卒	約17万円
高校卒	約16万円

※地域手当や扶養手当などの諸手当は別途支給されます。

年収の目安

年齢や役職によって異なりますが、おおよその目安は以下の通りです。

年代・役職	年収目安
20代前半	約300〜360万円
30代前半	約450〜550万円
40代（係長級）	約600〜700万円
50代（課長級）	約750〜850万円

主な手当・福利厚生

• 通勤手当：公共交通機関利用の場合は実費支給（上限あり）、自家用車通勤の場合も距離に応じて支給
• 住居手当：賃貸住宅居住者に支給（上限28,000円程度、世帯主の場合）
• 扶養手当：配偶者や子どもがいる場合に支給
• 期末・勤勉手当：年間で給料月額の約4.5ヶ月分
• 退職手当：勤続年数に応じて支給

休暇制度

年次有給休暇は年20日付与されるほか、夏季休暇、結婚休暇、出産休暇、育児休業、介護休暇など、ライフイベントに応じた休暇制度が充実しています。育児休業の取得率は女性職員でほぼ100%、男性職員でも年々上昇しており、ワークライフバランスを重視する組織文化が育ちつつあります。

給与水準は他の地方自治体と比較して標準的ですが、安定した収入と手厚い福利厚生が確保されています。

採用試験の内容

岐阜県庁の採用試験は、一次試験と二次試験で構成されます。

一次試験

教養試験：知能分野（文章理解、数的処理、判断推理、空間把握）と知識分野（社会科学、人文科学、自然科学）から出題されます。時事問題も含まれるため、日常的に新聞やニュースに目を通す習慣が重要です。

専門試験（大卒程度行政職）：行政法、民法、経済学、政治学、行政学、社会政策などから出題されます。出題範囲が広いため、早めに学習計画を立て、効率的に対策することが求められます。

論文試験：県政に関わる政策課題についての論述が求められます。岐阜県の具体的な施策や地域課題を踏まえた内容が問われることが多いため、日頃から県の政策動向をチェックしておくことが重要です。

二次試験

個別面接：志望動機、自己PR、岐阜県の政策に対する理解度、公務員としての適性などが問われます。面接時間は一人あたり20〜30分程度で、複数の面接官によって実施されます。

集団討論：数名のグループで与えられたテーマについて討論します。論理的思考力、コミュニケーション能力、協調性、リーダーシップなどが総合的に評価されます。

適性検査：職務遂行能力や性格特性を測定する検査が実施されることがあります。

試験倍率の傾向

大卒程度の行政職では、倍率は4〜7倍程度で推移しています。年度や経済情勢によって変動しますが、専門職や技術職は区分によって倍率が異なり、行政職よりも低めの傾向にあります。競争率は決して低くありませんが、しっかりとした準備をすれば十分に合格可能な水準です。

面接・論文で問われやすいテーマ

• 人口減少対策と移住促進
• 防災・減災対策（豪雨災害、地震対策）
• 産業振興（航空宇宙産業、中小企業支援）
• 観光振興とインバウンド対策
• 森林・環境保全
• 医療・福祉の充実
• デジタル化の推進
• 地域活性化と地方創生

これらのテーマについて、岐阜県の現状と課題を整理し、具体的な政策と結びつけて自分の考えを述べられるよう準備しましょう。

志望動機を作るコツ（岐阜県庁編）

説得力のある志望動機を作成するためのポイントを解説します。

1. 岐阜県の具体的な地域課題に言及する

「自然が豊か」「伝統文化がある」といった一般的な魅力だけでなく、具体的な課題に触れることが重要です。人口減少、南北の地域格差、防災対策、産業構造の転換など、データや事例を交えて説明できると説得力が増します。

2. 岐阜県の重点政策と自分の経験を関連づける

自分の学びや経験が、岐阜県の政策にどう貢献できるかを具体的に示しましょう。大学での専攻、ゼミでの研究、インターンシップ、ボランティア活動など、自分のバックグラウンドと県の施策を結びつけることがポイントです。

3. 「なぜ岐阜県なのか」を明確にする

他の自治体ではなく、岐阜県でなければならない理由を明確にしましょう。地元出身者なら地域への思い入れ、県外出身者なら岐阜県との具体的な接点やきっかけを示すことが大切です。

4. 将来のビジョンを具体的に語る

岐阜県庁でどのような仕事をしたいのか、どう貢献したいのかを明確に述べましょう。「防災対策に携わりたい」「航空宇宙産業の振興に取り組みたい」など、具体的な分野や施策に触れると効果的です。

志望動機の例文

「私が岐阜県庁を志望する理由は、防災・減災対策を通じて県民の安全・安心な暮らしを守りたいと考えるからです。大学で防災学を専攻し、2018年の西日本豪雨災害について研究する中で、岐阜県が受けた被害と復旧への取り組みを知りました。ゼミでは実際に被災地を訪れ、住民の方々から当時の状況や行政の対応について話を伺いました。

岐阜県は地形的に豪雨災害や土砂災害のリスクが高く、気候変動により災害の激甚化も懸念されています。しかし同時に、流域治水の推進や砂防事業の強化など、先進的な防災対策に取り組んでいることも知りました。特に、ハード整備とソフト対策を組み合わせた総合的なアプローチに共感しました。

私自身、大学時代に地域の防災訓練運営ボランティアに参加し、住民と行政、専門家をつなぐコーディネートの重要性を学びました。この経験を活かし、岐阜県庁職員として現場に寄り添いながら、災害に強い県土づくりに貢献したいと考えています」

まとめ

岐阜県庁は、豊かな自然環境と多様な産業基盤を持つ自治体です。防災・減災対策、産業振興、観光振興、森林・環境保全など、幅広い政策分野で特色ある取り組みを展開しています。県庁職員として働く魅力は、地域に密着しながらスケールの大きな政策立案・実行に携われることです。

自治体研究を進める際には、岐阜県の公式ホームページ、総合計画、各種白書などを活用し、最新の政策動向を把握しましょう。可能であれば県庁説明会やインターンシップに参加し、職員から直接話を聞くことで、よりリアルな情報を得ることができます。

受験勉強と並行して自治体研究を深めることは容易ではありませんが、面接や論文試験では確実に差がつきます。志望動機は、岐阜県の地域課題と自分自身の経験や思いをしっかり結びつけることが何より重要です。「この課題に取り組みたい」という明確なビジョンを持つことが、合格への最短距離となります。

岐阜県庁での仕事を通じて、ふるさとや地域社会に貢献したいという熱意を持つ皆さんの挑戦を応援しています。