はじめに
公務員試験を目指す皆さん、青森県庁について深く研究できていますか?
面接官が知りたいのは「なぜ青森県なのか」という明確な理由です。単なる地元愛だけでなく、人口減少や高齢化が全国トップクラスで進む青森県で、あなたは何を成し遂げたいのか。その具体的なビジョンが問われます。
私は青森県庁で12年間勤務していますが、全国最速で進む人口減少という厳しい現実と向き合いながらも、豊かな自然、独自の文化、そして県民の温かさに支えられて、やりがいのある仕事を続けています。この記事では、現役職員の視点から青森県庁の組織体制、業務の特徴、採用試験対策まで詳しく解説します。志望動機作成の参考にしてください。
青森県庁の基本情報と組織概要
青森県は本州最北端に位置し、三方を海に囲まれた自然豊かな県です。しかし、人口減少・高齢化が全国で最も深刻な自治体の一つでもあります。
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 人口 | 約118万人(全国31位、減少率全国トップクラス) |
| 県庁所在地 | 青森市 |
| 面積 | 9,646km²(全国8位) |
| 職員数 | 約12,000人(知事部局約3,500人、教育庁約6,000人、警察本部約2,500人) |
| 予算規模 | 一般会計約7,500億円 |
| 地域県民局 | 6地域県民局(東青、中南、三八、西北、上北、下北) |
地理的特徴
青森県は津軽地方、南部地方、下北地方に大きく分かれ、それぞれ異なる文化や方言を持ちます。県庁所在地の青森市は人口約27万人ですが、弘前市、八戸市という2つの中核都市があり、「三大都市構造」が特徴です。陸奥湾、日本海、太平洋の三方を海に囲まれ、漁業が盛んです。また、りんごの生産量は全国の約6割を占め、農業も基幹産業となっています。
冬は厳しい豪雪地帯であり、特に青森市の積雪量は全国の県庁所在地で最多です。この気候条件が、県民の暮らしや産業、行政サービスに大きな影響を与えています。
現役職員Aさん(入庁9年目・産業労働部門)のコメント
「青森県庁で働く最大の特徴は、『課題先進県』としての使命感です。人口減少、高齢化、若者流出——全国で起こる問題が、青森では一足早く、そして深刻に現れています。だからこそ、ここで成功した政策モデルは全国のロールモデルになり得る。そのプレッシャーとやりがいを日々感じています。私は産業振興を担当していますが、県内企業の後継者不足や販路開拓支援など、目の前の課題に向き合うことが、将来の青森を作ることに直結していると実感しています」
青森県庁の業務の特徴
青森県庁の業務は、人口減少対策を軸に、多岐にわたる政策を展開しています。
主要政策分野
人口減少対策・移住促進 2045年には人口が80万人を切ると予測される中、移住促進、UIJターン支援、関係人口創出が最重要課題です。「あおもり暮らし」ポータルサイトの運営や、移住体験ツアー、移住支援金制度などを展開しています。
農林水産業振興 りんご、ながいも、にんにくなど全国トップクラスの生産量を誇る農産物の振興、ブランド化、輸出促進が重点施策です。また、ホタテ、イカなど水産業も重要で、資源管理と漁業経営の安定化に取り組んでいます。
観光振興 世界自然遺産「白神山地」、特別史跡「三内丸山遺跡」、ねぶた祭などの文化資源を活かした観光振興が柱です。インバウンド回復への対応、滞在型観光の推進、DMO支援などが進められています。
医療・福祉・健康増進 平均寿命が全国下位という課題に対し、「短命県返上」をスローガンに健康寿命延伸施策を展開。減塩運動、検診受診率向上、医師確保対策などが重点課題です。
エネルギー政策 風力発電のポテンシャルが全国トップクラスであり、再生可能エネルギーの導入促進、核燃料サイクル施設への対応など、エネルギー政策は青森県の重要なテーマです。
雪対策・防災 豪雪対策、地震・津波対策、火山防災など、自然災害への備えは県民生活に直結する重要業務です。
現役職員Bさん(入庁7年目・地域県民局勤務経験あり)のコメント
「青森県庁では、本庁と地域県民局の両方を経験することで、政策の立案側と実行側の両面を学べます。私は入庁後、下北地域県民局に配属され、地域に密着した仕事をしました。窓口対応や地元事業者との調整など、住民の顔が見える距離で働くことで、『誰のために働いているのか』を常に意識できました。その後、本庁の企画部門に異動し、県全体の政策を考える立場になりましたが、地域での経験が今も活きています。若手のうちに地域を経験することは、県庁職員として大きな財産になります」
青森県庁の代表的な政策・取り組み事例
面接では「青森県の政策をどう見ているか」が必ず問われます。最新の取り組みを把握しておきましょう。
1. 「攻めの農林水産業」の推進
青森県は農林水産業を「攻めの産業」と位置づけ、生産力向上だけでなく、付加価値向上、販路拡大、輸出促進を三本柱に展開しています。特にりんごは、輸出額が年々増加しており、台湾、香港、タイなどアジア市場での販売強化に力を入れています。また、スマート農業の導入支援、担い手育成、6次産業化による高付加価値化も推進中です。
2. 「青森県型地域共生社会」の実現
高齢化率が全国トップクラスの青森県では、高齢者、障害者、子どもなど全ての県民が安心して暮らせる「地域共生社会」の実現を目指しています。地域包括ケアシステムの構築、福祉人材の確保・育成、見守り体制の強化などが柱です。
3. 「短命県返上」プロジェクト
平均寿命が男女ともに全国下位という現実に対し、県を挙げて健康寿命延伸に取り組んでいます。減塩の推進、野菜摂取量の増加、運動習慣の定着、がん検診受診率向上などを展開。「だし活」(だしを活用した減塩)や「あおもり食命人」(健康づくりのサポーター)など、ユニークな取り組みも話題です。
4. 再生可能エネルギーの導入促進
風力発電の適地が多く、日本海側・津軽半島・下北半島などで大規模な風力発電プロジェクトが進行中です。2030年度には県内エネルギー需要の100%以上を再エネで賄う目標を掲げており、脱炭素社会の実現に向けた先進的な取り組みを進めています。
5. 「あおもり創生」パートナーシップの推進
人口減少に立ち向かうため、行政だけでなく、企業、大学、NPO、地域コミュニティなど多様な主体と連携する「あおもり創生パートナーシップ」を展開。移住促進、起業支援、関係人口創出など、官民一体での地方創生に取り組んでいます。
これらの政策は、面接で「青森県のどの施策に関心があるか」と聞かれた際の具体例として使えます。ただし、丸暗記ではなく「なぜその政策が必要なのか」「自分ならどう関わりたいか」まで深く考えておくことが重要です。
勤務環境・職員文化
異動サイクル
青森県庁では、概ね3〜4年で異動があります。若手職員の場合、入庁後数年で地域県民局に配属されるケースが多く、その後、本庁と地域を行き来しながらキャリアを形成していくのが一般的です。地域県民局は青森市、弘前市、八戸市、五所川原市、十和田市、むつ市の6カ所にあり、転居を伴う異動もあります。
働き方改革の取り組み
青森県庁でも働き方改革は進んでいます。テレワークは部署によって対応状況が異なりますが、企画・調整業務中心の部門では週1〜2回程度の在宅勤務が可能です。窓口業務や現場対応が多い部署では難しい場合もあります。フレックスタイム制度の導入や、ノー残業デーの設定など、長時間労働の是正に向けた取り組みも進められています。
時間外勤務は、繁忙期と閑散期の差があります。予算編成期や議会期間中は残業が増える傾向にありますが、近年は業務効率化の取り組みにより、長時間労働は減少傾向にあります。
職員文化
青森県庁の職員文化は、「真面目で堅実」という印象です。地域に根ざした仕事が多く、県民との距離が近いため、誠実さやコミュニケーション能力が重視されます。また、人口減少という厳しい現実に向き合う中で、「何とかしなければ」という使命感を持った職員が多いのも特徴です。
一方で、大規模組織ゆえの縦割り意識や前例踏襲の傾向も残っていますが、若手職員の意見を吸い上げる仕組みや、政策提案制度なども整備されており、チャレンジする姿勢は歓迎される風土があります。特に、人口減少対策など喫緊の課題に対しては、従来の枠にとらわれない発想が求められています。
職員の声(体験談)
職員Cさん(入庁11年目・健康福祉部門)
私が青森県庁を志望したのは、大学時代に祖父を病気で亡くしたことがきっかけです。青森県は平均寿命が全国最下位クラスで、周りにも若くして亡くなる方が多い。「この現実を変えたい」という思いが、私を県庁職員という道に導きました。
入庁後、最初の配属は中南地域県民局でした。地域の健康づくりイベントの企画運営や、市町村との連携業務を担当しました。印象に残っているのは、地域の保健師さんたちと一緒に減塩キャンペーンを展開したことです。「県庁の若い職員が本気で取り組んでいる」と地域の方々に言われたときは、この仕事の意義を実感しました。
現在は本庁で「短命県返上」プロジェクトに携わっています。データ分析、施策立案、関係機関との調整など、やることは山積みですが、県民の健康寿命を延ばすという明確な目標に向かって働けることにやりがいを感じています。受験生の皆さんには、青森県のどの課題に関心があるのか、そしてどう貢献したいのかを明確にして面接に臨んでほしいです。あなたの熱意が、青森県の未来を変える力になります。
職員Dさん(入庁6年目・観光国際戦略部門)
私は県外出身で、大学で観光学を専攻していました。青森県を訪れたとき、ねぶた祭の迫力、白神山地の神秘的な自然、三内丸山遺跡のスケール感に圧倒され、「この素晴らしい資源を多くの人に知ってもらいたい」と思ったことが、青森県庁を志望した理由です。
入庁後は観光部門に配属され、現在はインバウンド誘致や観光プロモーションを担当しています。特に力を入れているのが、台湾や香港からの観光客誘致です。現地でのプロモーションイベントに参加し、青森の魅力を直接PRする機会もありました。言葉の壁や文化の違いに戸惑うこともありましたが、「青森に行ってみたい」と言われたときの喜びは何物にも代えがたいものです。
青森県庁の魅力は、豊かな地域資源を活かした仕事ができることです。農業、漁業、観光、文化——青森には誇れるものがたくさんあります。若手でも責任ある仕事を任せてもらえる環境があり、成長を実感できます。受験生の皆さんには、青森の魅力と課題の両方をしっかり理解した上で、「自分に何ができるか」を考えてほしいです。面接では、あなたの言葉で青森への思いを語ってください。
給料・年収・福利厚生
初任給(大卒行政職)
| 区分 | 月額 |
|---|---|
| 大学卒 | 約188,100円 |
| 短大卒 | 約167,100円 |
| 高校卒 | 約156,400円 |
※上記は基本給であり、これに地域手当、扶養手当、住居手当、通勤手当などが加算されます。
平均年収(世代別目安)
| 年齢 | 年収目安 |
|---|---|
| 20代後半 | 約380万〜430万円 |
| 30代 | 約480万〜580万円 |
| 40代 | 約620万〜720万円 |
| 50代 | 約720万〜820万円 |
※上記はあくまで目安であり、職位や手当によって変動します。
主な手当・福利厚生
- 地域手当: 青森市内勤務の場合、給料月額の3%
- 扶養手当: 配偶者6,500円/月、子1人につき10,000円/月など
- 住居手当: 賃貸住宅居住者は最大28,000円/月(条件あり)
- 通勤手当: 公共交通機関利用の場合、最大55,000円/月
- 寒冷地手当: 冬季(11月〜3月)に支給、世帯構成により異なる
- 期末・勤勉手当: 年間約4.4ヶ月分(年度により変動)
休暇制度
- 年次有給休暇: 年20日(繰越可)
- 夏季休暇: 3日
- 結婚休暇、出産休暇、忌引休暇など特別休暇も充実
- 育児休業制度、介護休業制度あり
福利厚生は公務員として標準的な水準ですが、寒冷地手当など地域特性に応じた手当があります。
採用試験の内容
青森県庁の採用試験は、職種によって異なりますが、一般行政職の場合、以下のような流れで実施されます。
試験区分
- 行政(大卒程度)
- 行政(高卒程度)
- 社会人枠
- その他、技術職(農業、林業、水産、土木、建築など多数)
試験内容(行政・大卒程度)
第1次試験
- 教養試験: 知能分野・知識分野(標準的な公務員試験レベル)
- 専門試験: 政治学、行政学、憲法、民法、経済学、財政学など(選択式)
- 論文試験: 政策課題に関する論述(60〜90分程度)
第2次試験
- 個別面接: 複数回実施されることが多い
- 適性検査: 性格検査など
倍率の目安
青森県庁の採用倍率は、近年は3〜6倍程度で推移しています。職種や年度によって変動がありますが、極端に高倍率というわけではありません。特に技術職は、職種によっては倍率が低く、採用されやすい傾向があります。ただし、行政職の人気年度では倍率が上がることもあるため、しっかりとした準備が必要です。
面接・論文で問われやすいテーマ
- 人口減少・少子高齢化対策
- 移住促進・UIJターン支援
- 農林水産業振興(りんご、水産物のブランド化など)
- 観光振興とインバウンド対策
- 健康寿命延伸・短命県返上
- 再生可能エネルギー導入促進
- 地方創生・地域活性化
- 医療・福祉(医師確保、地域包括ケアなど)
- 防災・減災対策
論文試験では、これらのテーマについて「現状分析→課題抽出→解決策提示」という流れで論じる力が求められます。面接では、「なぜ青森県庁なのか」「どの政策に関心があるか」「青森県にどう貢献したいか」が深掘りされます。
志望動機を作るコツ(青森県庁編)
青森県庁の志望動機を作る際は、以下のポイントを押さえましょう。
1. 青森県ならではの地域課題に触れる
「地方公務員になりたい」だけでは不十分です。青森県特有の課題——人口減少、短命県、一次産業の担い手不足、豪雪など——に言及し、「なぜ青森県で働きたいのか」を明確にしましょう。
2. 重点政策を盛り込む
青森県庁が現在力を入れている政策(短命県返上、攻めの農林水産業、移住促進など)に触れることで、自治体研究をしっかり行っていることをアピールできます。
3. 自分の経験やスキルと結びつける
学生時代の活動、アルバイト、ボランティア、留学経験などと、青森県庁でやりたい仕事を結びつけましょう。「私の〇〇という経験を活かして、△△という政策に貢献したい」という形で具体性を持たせます。
4. 青森県への愛着・関心を示す
県民であれば「生まれ育った青森県に恩返ししたい」、県外出身であれば「青森県を訪れて魅了された経験」などを盛り込むと、熱意が伝わります。
志望動機例文
私が青森県庁を志望する理由は、人口減少という厳しい現実に立ち向かい、持続可能な青森県の未来を創りたいからです。
私は青森市で生まれ育ちましたが、高校時代の同級生の多くが進学や就職で県外に出て、戻ってこない現実を目の当たりにしました。大学で地域政策を学ぶ中で、青森県の人口減少率が全国トップクラスであることを知り、「このままでは故郷が消滅してしまう」という危機感を抱きました。この経験から、若者が地元に残り、活躍できる環境を作りたいと強く思うようになりました。
青森県庁が推進する「あおもり創生」の取り組み、特に移住促進や起業支援に強い関心があります。大学時代、地域おこし協力隊のサポート活動に参加し、都市部から移住してきた方々が地域で活躍する姿を見て、外からの視点が地域を変える力になることを実感しました。この経験を活かし、UIJターン者と地域をつなぐ架け橋となり、青森県に新しい風を呼び込みたいと考えています。
また、「短命県返上」プロジェクトにも深い関心があります。祖父を若くして亡くした経験から、健康寿命延伸は私にとって個人的なテーマでもあります。減塩の推進や検診受診率向上など、県民の健康を守る施策に携わり、青森県民が長く健康に暮らせる社会を実現したいと考えています。
青森県は厳しい課題を抱えていますが、豊かな自然、誇るべき文化、温かい県民性という大きな財産もあります。青森県庁職員として、地域に寄り添いながら、未来につながる政策を実行し、次世代に誇れる青森県を創りたいと強く願っています。
この例文は一つのモデルですが、重要なのは自分の言葉で語ることです。上記を参考にしつつ、自分自身の経験や思いを織り交ぜて、オリジナルの志望動機を作り上げてください。
まとめ
青森県庁は、人口減少・高齢化という全国共通の課題が最も早く、深刻に表れている「課題先進県」です。
青森県庁の特徴を整理すると:
- 人口減少対策が最重要課題
- 農林水産業、観光など豊かな地域資源を活かした政策
- 短命県返上という明確な健康政策目標
- 本庁と地域県民局を行き来する異動サイクル
- 地域に密着した現場主義の仕事
公務員試験の勉強と並行して、自治体研究をしっかり行うことが合格への近道です。青森県庁のホームページや各種報道、統計データなどを活用し、最新の政策動向を把握しておきましょう。
志望動機を作る際は、「青森県の地域課題」と「自分がやりたいこと」をしっかり結びつけることが大切です。単なる憧れではなく、具体的なビジョンを持って面接に臨んでください。
青森県という、課題と可能性が共存するフィールドで、皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています。頑張ってください!

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