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【現役職員が語る】福島県庁の仕事内容|組織体制・面接対策・試験倍率を徹底解説

目次

はじめに

福島県庁を目指す皆さんへ。正直に言います。ここで働くことは、簡単ではありません。

東日本大震災、原発事故、風評被害。福島県は、他のどの自治体も経験したことのない複合災害と向き合い続けています。入庁して10年以上経った今も、「復興」という言葉の重さを日々感じています。でも、だからこそ、この仕事には他では得られない意義があるんです。

私は震災の翌年に入庁しました。当時の先輩職員の疲弊した表情を今も覚えています。それでも誰一人として諦めなかった。県民のために、福島の未来のために、できることを全てやる
その姿勢に心を打たれました。震災から14年が経とうとしていますが、復興はまだ道半ばです。廃炉、帰還困難区域の再生、風評払拭、そして新しい福島の創造。やるべきことは山積みです。

この記事では、福島県庁のリアルな姿を、震災・原発事故という現実から目を背けずにお伝えします。

福島県庁の基本情報と組織概要

福島県は、東日本大震災と原発事故という未曾有の複合災害からの復興に挑み続ける自治体です。

基本データ

項目内容
人口約178万人(全国21位、震災前から約20万人減少)
県庁所在地福島市
面積13,784km²(全国3位、北海道・岩手に次ぐ)
職員数約16,000人(知事部局約5,500人、教育庁約7,500人、警察本部約3,000人)
予算規模一般会計約1.4兆円(復興関連予算を含む)
方部・地方振興局7方部・6地方振興局(県北、県中、県南、会津、南会津、相双、いわき)

地理的特徴

福島県は、奥羽山脈と阿武隈高地によって3つの地域に分かれています。太平洋側の「浜通り」、中央部の「中通り」、日本海側の「会津」——それぞれが異なる気候、文化、産業を持ち、「小さな日本」とも言われます。

面積は全国3位と広大で、南北に約180km、東西に約160km。東京23区の約22倍の広さがあります。気候も地域によって大きく異なり、浜通りは比較的温暖、会津は豪雪地帯です。

震災と原発事故の影響で、双葉郡を中心とした沿岸部では避難指示が出され、多くの住民が避難を余儀なくされました。現在も帰還困難区域が残り、復興・再生が進行中です。

現役職員Aさん(入庁12年目・避難地域復興担当)のコメント

「福島県庁で働くということは、『復興』と向き合い続けることです。私は震災の翌年に入庁しましたが、配属先は避難地域の支援部署でした。故郷に帰れない方々、家族がバラバラになった方々、事業を諦めざるを得なかった方々——その苦しみを目の当たりにして、言葉を失いました。でも、避難者の方々は決して諦めていません。『もう一度、あの土地で暮らしたい』という思いを胸に、帰還を待っている。その思いに応えることが、私たち県職員の使命だと感じています。復興は終わっていません。むしろ、これからが本当の勝負だと思っています」

福島県庁の業務の特徴

福島県庁の業務は、復興・再生を中心軸に、極めて多岐にわたる政策を展開しています。

主要政策分野

原子力災害からの復興・再生 これが福島県政の最重要課題です。避難指示解除区域の帰還促進、帰還困難区域の特定復興再生拠点整備、廃炉への対応、放射線モニタリング、風評払拭など、他県にはない特殊な業務が中心となります。

風評・風化対策 農産物、水産物、観光——あらゆる分野で風評被害が残っています。正確な情報発信、安全性のPR、ブランド力の回復・向上が重要課題です。特に、ALPS処理水の海洋放出に関する風評対策は喫緊の課題です。

再生可能エネルギーの推進 「原発に依存しない社会」を目指し、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど、再エネの飛躍的拡大を進めています。2040年度には県内エネルギー需要の100%以上を再エネで賄う目標を掲げています。

産業振興・雇用創出 医療関連産業、ロボット関連産業、再エネ関連産業など、新たな産業集積を進めています。福島イノベーション・コースト構想を核に、浜通り地域の産業再生に取り組んでいます。

農林水産業の再生とブランド化 震災・原発事故で大きな打撃を受けた一次産業の再生が課題です。安全性の確保、GAP認証取得、ブランド力向上、輸出促進などに取り組んでいます。特に、福島県産米「福、笑い」や桃、日本酒などのブランド化を進めています。

観光振興・交流人口拡大 震災後、観光客が大幅に減少しました。教育旅行の誘致、インバウンド回復、大河ドラマ等を活用した誘客促進などに取り組んでいます。

人口減少対策・移住促進 震災による人口流出に加え、自然減も進んでいます。UIJターン促進、移住支援、関係人口創出などが重点施策です。

子育て支援・教育の充実 18歳以下の医療費無料化など、全国トップクラスの子育て支援策を展開しています。また、震災・原発事故を経験した県として、防災教育や放射線教育にも力を入れています。

医療・福祉の充実 医師不足、病院の偏在、高齢化への対応など、医療・福祉の課題に取り組んでいます。特に、避難地域の医療体制再構築は重要課題です。

現役職員Bさん(入庁8年目・農林水産部門)のコメント

「福島の農業を語る上で、原発事故を避けて通ることはできません。私は農業振興を担当していますが、全ての農産物が放射性物質検査を受け、安全性が確認されています。でも、それでも『福島産は買わない』という声がまだあるのが現実です。悔しいですよ、正直。福島の農家は、誰よりも安全に気を配り、高品質な農産物を作っているのに。だからこそ、風評を払拭し、福島の農産物の本当の価値を伝えることが私たちの使命だと思っています。『福、笑い』という米のネーミングには、『福島に笑顔を取り戻したい』という思いが込められています。その思いを実現するために、日々奮闘しています」

福島県庁の代表的な政策・取り組み事例

面接で問われる可能性が高い、福島県の重点政策を紹介します。

1. 「福島県総合計画『ふくしま新生プラン』」の推進

2021年度から2030年度までの10年間の県政運営指針です。「誰もが誇りを持ち、笑顔で暮らせる”ほんとうの空”が広がる福島」を将来像に掲げ、復興・再生と新たな未来の創造を両立させることを目指しています。

2. 福島イノベーション・コースト構想

浜通り地域を中心に、ロボット、エネルギー、農林水産業、医療関連産業などの新産業を創出する国家プロジェクトです。福島ロボットテストフィールド、国際教育研究拠点(F-REI)の整備など、世界に類を見ない先進的な取り組みを進めています。

3. ホープツーリズムの推進

震災・原発事故の教訓を学ぶ「ホープツーリズム」を推進しています。被災地を訪れ、復興の現場を見て、学び、考える——単なる観光ではなく、「学びと希望の旅」として全国に発信しています。

4. ALPS処理水に関する風評対策

2023年夏から始まったALPS処理水の海洋放出に伴い、漁業を中心とした風評対策を強化しています。科学的データに基づく正確な情報発信、水産物の販路拡大支援、国内外へのPR活動などを展開しています。

5. 「再エネ先駆けの地」の実現

2040年度に県内エネルギー需要の100%以上を再エネで賄う目標を掲げ、太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱の導入を加速しています。洋上風力発電の導入や、水素社会の実現に向けた取り組みも進めています。

6. ふくしま創生総合戦略

人口減少に歯止めをかけるため、移住促進、UIJターン就職支援、起業支援、関係人口創出などを総合的に展開しています。首都圏での移住相談会、オンライン移住相談、移住支援金制度などを実施しています。

7. 「ふくしまプライド。」による農林水産物の風評払拭

福島県産農林水産物の安全性と品質の高さを全国・世界に発信する「ふくしまプライド。」プロジェクトを展開しています。GAP認証取得促進、海外バイヤーとのマッチング、SNSを活用した情報発信などを進めています。

8. 18歳以下の医療費無料化

全国トップクラスの子育て支援策として、18歳以下の医療費を無料化しています。子育て世帯の経済的負担軽減と、県内定着促進を目的としています。

これらの政策は、面接で「福島県のどの取り組みに関心があるか」と聞かれた際に使えます。重要なのは、政策の背景にある「震災・原発事故からの復興」という文脈を理解することです。

勤務環境・職員文化

異動サイクル

福島県庁では、おおむね3〜4年で異動があります。若手職員は、入庁後数年で地方振興局や出先機関に配属されることが多く、その後、本庁と地方を行き来しながらキャリアを形成していきます。

福島県は面積が広いため、転居を伴う異動も多くなります。特に、会津地方や浜通り地方への異動は、生活環境が大きく変わります。

震災・原発事故関連の部署は業務量が多く、責任も重大です。復興庁、環境省、経済産業省など、国の機関との調整業務も多いのが特徴です。

働き方改革の状況

福島県庁でも働き方改革は進んでいますが、復興関連部署など業務量が多い部門では、依然として時間外勤務が多い傾向にあります。テレワークは部署によって活用度合いが異なりますが、企画調整系の部署では週1〜2回程度の在宅勤務が可能です。

ノー残業デーの設定や、早帰り推奨日の設定など、長時間労働の是正に向けた取り組みが行われています。ただし、災害対応や緊急時には、職員が総力を挙げて対応する体制が整っています。

職員文化

福島県庁の職員文化は、「使命感と粘り強さ」という言葉が最も当てはまります。震災・原発事故という未曾有の災害を経験し、今もその対応を続けている職員が多く、「福島のために何とかしなければ」という強い使命感が組織全体に根付いています。

一方で、長期間にわたる復興業務による職員の疲弊も課題です。メンタルヘルス対策、職員のケア体制の充実などが進められています。

職員同士の連帯感は強く、困難な状況でも支え合う文化があります。震災を共に乗り越えてきた経験が、組織の結束力を高めています。

若手職員の意見を聴く場も設けられており、政策提案制度なども整備されています。特に、復興・再生という新たな課題に対しては、従来の枠にとらわれない発想が求められています。

職員の声(体験談)

職員Cさん(入庁13年目)

私は浜通り出身で、震災当時は大学生でした。自宅は津波の被害を受け、友人の中には家族を亡くした人もいました。原発事故で避難を余儀なくされ、「もう二度と故郷に帰れないかもしれない」と絶望しました。でも、その絶望の中で「自分にできることは何か」を考え、福島県庁を志望することを決めました。

入庁後、帰還支援の部署に配属されました。避難指示が解除された地域の住民の帰還を支援する仕事です。インフラ整備、商業施設の誘致、医療・福祉サービスの確保、コミュニティの再生——やるべきことは山積みでした。でも、一番難しいのは、住民の方々の「帰りたいけど帰れない」という複雑な思いに向き合うことでした。

「放射線は本当に大丈夫なのか」「若い世代に帰還を勧めていいのか」「帰っても仕事はあるのか」——そういう不安に対して、私たちは誠実に向き合い、正確な情報を提供し、一緒に考えることしかできません。答えのない問いに向き合う日々は、正直、しんどいです。でも、帰還した住民の方が「やっぱり故郷はいいね」と笑顔を見せてくれたときは、この仕事の意義を実感します。

受験生の皆さんには、福島の現実から目を背けずに向き合ってほしいです。きれいごとだけでは務まらない厳しい仕事です。でも、だからこそ、本気で福島の未来を創りたいという覚悟を持った人に来てほしいと思っています。

職員Dさん(入庁7年目)

私は県外出身で、大学で農業経済を専攻していました。福島県を知ったのは、震災後のボランティア活動でした。農家の方々が、放射性物質検査を受けながら必死に農業を続けている姿を見て、「この人たちを支援したい」と思いました。

入庁後は農業振興部門に配属され、現在は風評払拭を担当しています。福島県産の農産物は、全て放射性物質検査を受け、基準値を超えたものは一切出荷されていません。それでも「福島産は危険」というイメージが根強く残っています。科学的データを示しても、「それでも不安」という声がある。この壁を乗り越えることの難しさを日々感じています。

でも、諦めません。首都圏でのPRイベント、SNSでの情報発信、インフルエンサーとのコラボ——あらゆる手段を使って、福島の農産物の本当の価値を伝えています。実際に食べてもらえば、美味しさは伝わります。「福島産って美味しいんですね」と言われるたびに、少しずつ前進していると感じます。

福島県庁で働くことは、正直、楽ではありません。風評という見えない敵と戦い続ける日々です。でも、福島の未来を信じて、粘り強く取り組んでいます。受験生の皆さんには、「なぜ福島なのか」を自分の言葉で語れるようになってほしいです。

給料・年収・福利厚生

初任給(大卒行政職)

区分月額
大学卒約191,300円
短大卒約169,900円
高校卒約158,800円

※上記は基本給であり、これに地域手当、扶養手当、住居手当、通勤手当などが加算されます。

平均年収(世代別目安)

年齢年収目安
20代後半約400万〜450万円
30代約500万〜600万円
40代約650万〜750万円
50代約750万〜850万円

採用試験の内容

福島県庁の採用試験は、職種によって異なりますが、一般行政職の場合は以下のような流れです。

試験区分

  • 行政事務A(大卒程度)
  • 行政事務B(高卒程度)
  • 社会人経験者枠
  • その他、技術職(農業、林業、水産、土木、建築など多数)

試験内容(行政事務A)

第1次試験

  • 教養試験: 知能分野・知識分野(標準的な公務員試験レベル)
  • 専門試験: 政治学、行政学、憲法、民法、経済学、財政学など(選択式)
  • 論文試験: 政策課題に関する論述(60〜90分程度)

第2次試験

  • 個別面接: 複数回実施されることが多い
  • 集団討論: グループディスカッション形式
  • 適性検査: 性格検査など

倍率の目安

福島県庁の採用倍率は、近年は3〜6倍程度で推移しています。職種や年度によって変動がありますが、全国的に見ると標準的な倍率です。特に技術職は、職種によっては倍率が低く、採用されやすい傾向があります。ただし、復興関連業務が多いため、採用人数は他県より多めです。

面接・論文で問われやすいテーマ

  • 震災・原発事故からの復興、帰還促進
  • 風評・風化対策
  • ALPS処理水問題への対応
  • 再生可能エネルギーの推進
  • 福島イノベーション・コースト構想
  • 農林水産業の再生とブランド化
  • 人口減少対策、移住促進
  • 観光振興、ホープツーリズム
  • 子育て支援、教育の充実
  • 医療・福祉の充実

論文試験では、これらのテーマについて「現状分析→課題抽出→解決策提示」という流れで論じる力が求められます。面接では、「なぜ福島県庁なのか」「震災・原発事故をどう捉えているか」「福島県でどう貢献したいか」が深掘りされます。特に、復興への覚悟や使命感が問われることが多いです。

志望動機を作るコツ(福島県庁編)

福島県庁の志望動機を作る際は、以下のポイントを意識しましょう。

1. 震災・原発事故という現実に正面から向き合う

福島県を志望する以上、震災・原発事故から目を背けることはできません。この歴史的事実を理解した上で、「それでも福島のために働きたい」という覚悟を示すことが重要です。

2. 具体的な政策や課題に言及する

「福島イノベーション・コースト構想」や「風評払拭」「再エネ推進」など、県が力を入れている政策に触れることで、自治体研究をしっかり行っていることを示せます。

3. 自分の経験と結びつける

学生時代の活動、ボランティア、アルバイト、留学経験などと、福島県庁でやりたい仕事を結びつけましょう。「私の〇〇という経験を活かして、△△に貢献したい」という形で具体性を持たせます。

4. 福島県への思いを伝える

県民であれば「故郷への思い」、県外出身なら「震災を通じて福島に関心を持った経緯」「福島を訪れて感じたこと」など、個人的なつながりを示すと説得力が増します。

志望動機例文

私が福島県庁を志望する理由は、震災と原発事故という未曾有の災害からの復興に挑戦し、新しい福島を創りたいからです。

私は福島市で生まれ育ちましたが、中学2年生のときに東日本大震災を経験しました。揺れの恐怖、停電、そして原発事故のニュース——あの日のことは今も鮮明に覚えています。浜通りに住んでいた親戚は避難を余儀なくされ、農家だった祖父は「もう農業はできない」と肩を落としました。「福島は終わった」という言葉を何度も聞きました。でも、私は諦めたくなかった。「福島を立て直したい」——その思いが、私を県庁職員という道に導きました。

大学では地域政策を専攻し、復興政策について研究しました。福島の復興は、単なるインフラ復旧ではなく、産業の再生、コミュニティの再構築、風評の払拭など、多層的な課題に取り組む必要があります。特に、福島イノベーション・コースト構想に強い関心があります。被災地を新産業の集積地として再生する——この挑戦的な構想に、私も参加したいと考えています。

また、風評払拭にも取り組みたいです。ゼミで農産物の風評被害について研究する中で、科学的データと消費者の認識のギャップを痛感しました。正確な情報発信と、実際に福島を訪れて体験してもらうことの重要性を学びました。「ホープツーリズム」など、教育的な観光を通じて福島の現実を伝え、風評を払拭することに貢献したいと考えています。

震災から14年が経とうとしていますが、復興はまだ道半ばです。帰還困難区域の再生、ALPS処理水問題、人口減少——課題は山積みです。でも、福島県は「再エネ先駆けの地」を目指し、新しい未来を創ろうとしています。私は福島県庁職員として、復興の総仕上げと、その先の新しい福島の創造に全力で取り組みたいと強く願っています。福島の未来を信じて、諦めずに挑戦し続けます。

この例文はあくまで参考です。大切なのは自分の言葉で、本気で語ること。福島への思いを、自分自身の経験を交えて、誠実に伝えてください。

まとめ

福島県庁は、震災・原発事故という未曾有の災害からの復興に挑み続ける、使命感と覚悟が求められる職場です。

福島県庁の特徴をまとめると:

  • 震災・原発事故からの復興が最重要課題
  • 風評・風化対策という他県にない特殊な業務
  • 福島イノベーション・コースト構想など先進的な取り組み
  • 再エネ先駆けの地を目指す挑戦
  • 本庁と地方振興局を行き来する異動サイクル

公務員試験の勉強と同時に、自治体研究も怠らないことが合格への近道です。福島県庁のホームページ、各種報道、統計データなどを活用し、最新の政策動向を把握しておきましょう。可能であれば、実際に浜通り地域を訪れて、復興の現場を自分の目で見てください。

志望動機を作る際は、「福島の課題」と「自分がやりたいこと」をしっかり結びつけることが重要です。震災・原発事故という現実から目を背けずに、それでも福島のために働きたいという本気の覚悟を伝えてください。

福島県という、困難と希望が共存するフィールドで、一緒に未来を創る仲間として働ける日を楽しみにしています。

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