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【現役職員が語る】岩手県庁の仕事内容|組織体制・面接対策・試験倍率を徹底解説

目次

はじめに

公務員試験を目指す皆さん、岩手県庁についてしっかり研究できていますか?

東日本大震災からの復興、人口減少、広大な県土における地域格差。岩手県が抱える課題は重く、同時にやりがいに満ちています。あなたはこの地で何を成し遂げたいのか、具体的なビジョンが問われます。

私は岩手県庁で8年間勤務していますが、復興の最前線で県民と共に歩んできた経験は、公務員人生の大きな財産となっています。広大な県土ゆえの移動の大変さはありますが、それ以上に地域に根ざした仕事の深さと、県民の温かさに支えられて働いています。この記事では、現役職員の視点から岩手県庁の組織体制、業務の特徴、採用試験対策まで詳しく解説します。志望動機作成の参考にしてください。

岩手県庁の基本情報と組織概要

岩手県は本州最大の面積を誇り、豊かな自然と独自の文化を持つ一方、人口減少と東日本大震災からの復興という大きな課題に向き合っています。

基本データ

項目内容
人口約117万人(全国32位、減少傾向)
県庁所在地盛岡市
面積15,275km²(北海道に次ぐ全国2位)
職員数約14,000人(知事部局約4,500人、教育庁約6,500人、警察本部約3,000人)
予算規模一般会計約9,000億円
広域振興局4広域振興局・5地域振興センター(盛岡、県南、沿岸、県北)

地理的特徴

岩手県は南北約189km、東西約122kmという広大な県土を持ち、内陸部と沿岸部で気候や産業構造が大きく異なります。県庁所在地の盛岡市は人口約28万人で、内陸部の中心都市です。沿岸部は三陸海岸の豊かな漁業資源に恵まれていますが、東日本大震災で甚大な被害を受け、現在も復興が進行中です。

北上盆地を中心とした内陸部は農業が盛んで、米、りんご、畜産などが基幹産業。沿岸部は水産業が中心で、ワカメ、サケ、ホタテなどが主要産品です。また、世界遺産「平泉」や、宮沢賢治ゆかりの地など、文化的資源も豊富です。

現役職員Aさん(入庁10年目・復興防災部門)のコメント

「岩手県庁で働く上で避けて通れないのが、東日本大震災と復興です。私は震災の翌年に入庁しましたが、先輩職員の多くが復興業務に携わり、不眠不休で働いていた姿を今でも覚えています。復興は長い道のりで、まだ完了していません。仮設住宅の解消、産業の再生、防災意識の継承——やるべきことは山積みです。しかし、被災地の方々が少しずつ笑顔を取り戻していく姿を見ると、この仕事の意義を実感します。岩手県庁を志望する方には、ぜひ沿岸部を訪れて、復興の現場を自分の目で見てほしいです」

岩手県庁の業務の特徴

岩手県庁の業務は、復興推進を軸に、広域県土ならではの多様な政策を展開しています。

主要政策分野

復興推進・防災 東日本大震災からの復興は、今も岩手県政の最重要課題です。インフラ整備、産業再生、コミュニティ形成、防災教育、津波防災施設の維持管理など、ハード・ソフト両面での取り組みが続いています。また、震災の教�訓を次世代に継承する「伝承活動」も重要なテーマです。

人口減少対策・地域振興 県全体で人口減少が進む中、特に沿岸部と県北部の過疎化が深刻です。移住促進、UIJターン支援、関係人口創出、若者の地元定着などが重点施策です。

農林水産業振興 米、りんご、畜産、林業、水産業など、一次産業が基幹産業です。担い手育成、ブランド化、6次産業化、輸出促進など、「稼げる農林水産業」の実現に取り組んでいます。

ものづくり産業振興 自動車関連産業の集積地として、北上市周辺には多くの企業が立地しています。企業誘致、産学官連携、中小企業支援などを展開しています。

観光振興・文化振興 世界遺産「平泉」、世界遺産候補「北海道・北東北の縄文遺跡群」、三陸ジオパーク、宮沢賢治、民俗芸能など、豊富な観光・文化資源を活かした施策を推進しています。

医療・福祉 広域県土における医療アクセスの確保、医師・看護師不足対策、高齢者福祉、地域包括ケアシステムの構築などが課題です。

インフラ整備・交通政策 広大な県土を結ぶ道路網の整備、三陸沿岸道路の完成を活かした地域振興、公共交通の維持確保などが重要です。

現役職員Bさん(入庁8年目・広域振興局勤務経験あり)のコメント

「岩手県庁では、本州最大の面積という特性上、地域ごとの課題が全く異なります。私は入庁後、沿岸広域振興局に配属されましたが、復興の現場で地域の方々と向き合う日々でした。その後、県北広域振興局に異動し、今度は過疎・高齢化対策に取り組んでいます。同じ岩手県でも、沿岸と県北では抱える課題が全く違う。だからこそ、現場を知ることが何より大切です。若手のうちに広域振興局で地域の実情を学ぶことは、県庁職員として大きな財産になります」

岩手県庁の代表的な政策・取り組み事例

面接では「岩手県の政策をどう見ているか」が必ず問われます。最新の取り組みを把握しておきましょう。

1. 「いわて県民計画(2019-2028)」の推進

岩手県は10年間の長期計画として「いわて県民計画」を策定し、「東日本大震災津波の経験に基づき、引き続き復興に取り組みながら、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわて」の実現を目指しています。10の政策分野(健康・余暇、家族・子育て、教育、居住環境・コミュニティ、安全、仕事・収入、歴史・文化、自然環境、社会基盤、参画)を柱に、県民の幸福度向上を図っています。

2. 「いわて復興未来図」の推進

震災からの復興は、単なる「元に戻す」だけでなく、「より良い復興」を目指しています。高台移転、産業の高付加価値化、再生可能エネルギーの導入、防災文化の醸成など、震災の教訓を活かした新しい地域づくりが進められています。

3. 「いわてで働こう推進協議会」による移住・定住促進

首都圏での移住相談会、移住体験ツアー、オンライン相談、移住支援金制度など、多角的な移住促進策を展開しています。特に、若者のUIJターン就職支援に力を入れており、県内企業とのマッチング機会を創出しています。

4. ILC(国際リニアコライダー)誘致活動

北上山地への世界最大級の素粒子実験施設ILC誘致に取り組んでいます。実現すれば、世界中から研究者が集まり、地域経済や教育、国際交流に大きな影響をもたらすプロジェクトです。

5. 「いわて農林水産業ステップアップビジョン」の推進

農林水産業の産出額増大を目指し、生産性向上、高付加価値化、担い手育成を三本柱に展開しています。特に、畜産業(いわて牛、いわて鶏、短角牛など)のブランド化や、水産業の復興に力を入れています。

6. 「三陸防災復興プロジェクト2019」のレガシー継承

2019年に開催された三陸防災復興プロジェクトで培った防災意識や国際交流の成果を、継続的に発信・継承しています。震災の教訓を世界に伝える「防災教育」は、岩手県の重要な使命です。

これらの政策は、面接で「岩手県のどの施策に関心があるか」と聞かれた際の具体例として使えます。ただし、丸暗記ではなく「なぜその政策が必要なのか」「自分ならどう関わりたいか」まで深く考えておくことが重要です。

勤務環境・職員文化

異動サイクル

岩手県庁では、概ね3〜5年で異動があります。若手職員の場合、入庁後数年で広域振興局または地域振興センターに配属されるケースが多く、その後、本庁と地域を行き来しながらキャリアを形成していくのが一般的です。広域振興局は盛岡、花巻、釜石、二戸の4カ所にあり、転居を伴う異動も珍しくありません。

特に、沿岸部への異動は復興業務に携わる重要な機会であり、県庁職員としての使命感を実感できる経験となります。

働き方改革の取り組み

岩手県庁でも働き方改革は進んでいます。テレワークは部署によって対応状況が異なりますが、企画・調整業務中心の部門では週1〜2回程度の在宅勤務が可能です。窓口業務や現場対応が多い部署では難しい場合もあります。フレックスタイム制度の導入や、定時退庁日の設定など、長時間労働の是正に向けた取り組みも進められています。

時間外勤務は、繁忙期と閑散期の差があります。予算編成期や議会期間中、災害対応時は残業が増える傾向にありますが、近年は業務効率化の取り組みにより、長時間労働は減少傾向にあります。

職員文化

岩手県庁の職員文化は、「誠実で粘り強い」という印象です。震災対応や復興業務を通じて、困難な状況でも諦めずに取り組む姿勢が組織全体に浸透しています。また、広域県土ゆえに地域との関わりが深く、県民に寄り添う姿勢が重視されます。

一方で、大規模組織ゆえの縦割り意識や前例踏襲の傾向も残っていますが、若手職員の意見を吸い上げる仕組みや、政策提案制度なども整備されており、チャレンジする姿勢は歓迎される風土があります。特に、復興や人口減少対策など喫緊の課題に対しては、従来の枠にとらわれない発想が求められています。

職員の声(体験談)

職員Cさん(入庁12年目・沿岸広域振興局勤務経験あり)

私が岩手県庁を志望したのは、東日本大震災がきっかけでした。当時大学4年生だった私は、テレビで映し出される被災地の映像に言葉を失いました。特に、岩手県沿岸部の津波被害は甚大で、「何か自分にできることはないか」と考えるようになりました。ボランティアとして被災地を訪れたとき、県庁職員の方々が昼夜を問わず復興に尽力している姿を見て、「自分もこの一員になりたい」と強く思いました。

入庁後、念願だった沿岸広域振興局に配属されました。担当したのは、被災した商店街の再生支援です。仮設店舗から本設店舗への移行、イベント企画、情報発信など、地元の商店主の方々と膝を突き合わせて進めました。「県の職員がこんなに一緒に考えてくれるとは思わなかった」と言われたときは、涙が出そうになりました。

復興は終わっていません。ハード整備は進みましたが、心の復興、コミュニティの再生、産業の活性化など、まだまだ課題は山積みです。受験生の皆さんには、岩手県が抱える課題を自分事として捉え、「自分に何ができるか」を真剣に考えてほしいです。面接では、あなたの本気度が必ず伝わります。

職員Dさん(入庁7年目・農林水産部門)

私は県外出身で、大学で農業経済を専攻していました。岩手県を知ったのは、研究室の調査で訪れたときです。広大な農地、豊かな自然、そして何より、農家の方々の真摯な姿勢に感銘を受けました。「ここで農業振興に携わりたい」と思ったことが、岩手県庁を志望した理由です。

入庁後は農業普及センターに配属され、現在は6次産業化支援を担当しています。印象に残っているのは、小規模な酪農家が自社ブランドのチーズを開発するプロジェクトです。商品開発、販路開拓、補助金申請など、県庁職員として様々な支援を行いました。そのチーズが県内外で評価され、売上が伸びていると聞いたときは、本当に嬉しかったです。

岩手県庁の魅力は、一次産業という「食と命」を支える仕事に携われることです。生産者の顔が見える距離で働けるのは、県庁ならではの醍醐味です。また、広大な県土ゆえに、地域ごとに全く異なる特性があり、様々な経験ができます。受験生の皆さんには、岩手県の豊かな資源と可能性を理解した上で、「自分がどう貢献できるか」を具体的に考えてほしいです。

給料・年収・福利厚生

初任給(大卒行政職)

区分月額
大学卒約188,700円
短大卒約167,700円
高校卒約156,900円

※上記は基本給であり、これに地域手当、扶養手当、住居手当、通勤手当などが加算されます。

平均年収(世代別目安)

年齢年収目安
20代後半約390万〜440万円
30代約490万〜590万円
40代約630万〜730万円
50代約730万〜830万円

※上記はあくまで目安であり、職位や手当によって変動します。

主な手当・福利厚生

  • 地域手当: 盛岡市内勤務の場合、給料月額の3%
  • 扶養手当: 配偶者6,500円/月、子1人につき10,000円/月など
  • 住居手当: 賃貸住宅居住者は最大28,000円/月(条件あり)
  • 通勤手当: 公共交通機関利用の場合、最大55,000円/月
  • 寒冷地手当: 冬季(11月〜3月)に支給、世帯構成や地域により異なる
  • 期末・勤勉手当: 年間約4.4ヶ月分(年度により変動)

休暇制度

  • 年次有給休暇: 年20日(繰越可)
  • 夏季休暇: 3日
  • 結婚休暇、出産休暇、忌引休暇など特別休暇も充実
  • 育児休業制度、介護休業制度あり

福利厚生は公務員として標準的な水準ですが、寒冷地手当など地域特性に応じた手当があります。

採用試験の内容

岩手県庁の採用試験は、職種によって異なりますが、一般行政職の場合、以下のような流れで実施されます。

試験区分

  • 行政A(大卒程度)
  • 行政C(高卒程度)
  • 社会人枠
  • その他、技術職(農業、林業、水産、土木、建築など多数)

試験内容(行政A)

第1次試験

  • 教養試験: 知能分野・知識分野(標準的な公務員試験レベル)
  • 専門試験: 政治学、行政学、憲法、民法、経済学、財政学など(選択式)
  • 論文試験: 政策課題に関する論述(60〜90分程度)

第2次試験

  • 個別面接: 複数回実施されることが多い
  • 適性検査: 性格検査など

倍率の目安

岩手県庁の採用倍率は、近年は3〜5倍程度で推移しています。職種や年度によって変動がありますが、極端に高倍率というわけではありません。特に技術職は、職種によっては倍率が低く、採用されやすい傾向があります。ただし、行政職の人気年度では倍率が上がることもあるため、しっかりとした準備が必要です。

面接・論文で問われやすいテーマ

  • 東日本大震災からの復興、防災・減災対策
  • 人口減少・少子高齢化対策
  • 移住促進・UIJターン支援
  • 農林水産業振興(担い手育成、6次産業化など)
  • ものづくり産業振興・企業誘致
  • 観光振興(平泉、三陸ジオパークなど)
  • 医療・福祉(広域医療体制の確保など)
  • 地域コミュニティの維持・活性化
  • インフラ整備・公共交通の維持

論文試験では、これらのテーマについて「現状分析→課題抽出→解決策提示」という流れで論じる力が求められます。面接では、「なぜ岩手県庁なのか」「復興についてどう考えているか」「岩手県にどう貢献したいか」が深掘りされます。

志望動機を作るコツ(岩手県庁編)

岩手県庁の志望動機を作る際は、以下のポイントを押さえましょう。

1. 岩手県ならではの地域課題に触れる

「地方公務員になりたい」だけでは不十分です。岩手県特有の課題——震災復興、広域県土、人口減少、医療過疎など——に言及し、「なぜ岩手県で働きたいのか」を明確にしましょう。

2. 重点政策を盛り込む

岩手県庁が現在力を入れている政策(復興推進、いわて県民計画、移住促進、農林水産業振興など)に触れることで、自治体研究をしっかり行っていることをアピールできます。

3. 自分の経験やスキルと結びつける

学生時代の活動、アルバイト、ボランティア、留学経験などと、岩手県庁でやりたい仕事を結びつけましょう。「私の〇〇という経験を活かして、△△という政策に貢献したい」という形で具体性を持たせます。

4. 岩手県への愛着・関心を示す

県民であれば「生まれ育った岩手県に恩返ししたい」、県外出身であれば「岩手県を訪れて魅了された経験」や「震災を通じて関心を持った経緯」などを盛り込むと、熱意が伝わります。

志望動機例文

私が岩手県庁を志望する理由は、震災からの復興と人口減少という二つの大きな課題に立ち向かい、持続可能な岩手の未来を創りたいからです。

私は盛岡市で生まれ育ちましたが、東日本大震災で親戚が被災し、沿岸部の惨状を目の当たりにしました。高校時代、ボランティアとして釜石市を訪れ、「復興には長い時間がかかる」という現実を知りました。大学で地域政策を学ぶ中で、復興は単なるインフラ整備ではなく、産業再生、コミュニティ形成、防災文化の醸成など、総合的な取り組みが必要だと理解しました。この経験から、県庁職員として復興の最前線で働きたいと強く思うようになりました。

岩手県庁が推進する「いわて復興未来図」の取り組み、特に「より良い復興」という理念に共感しています。単に元に戻すのではなく、震災の教訓を活かして新しい地域を創る——この挑戦に、私も参加したいと考えています。また、三陸防災復興プロジェクトで培った防災意識を次世代に継承する活動にも強い関心があります。

同時に、岩手県全体の人口減少対策にも取り組みたいと考えています。大学のゼミで移住促進政策を研究し、UIJターン者が地域に定着するためには、仕事・住まい・コミュニティの三つが揃うことが重要だと学びました。この知見を活かし、移住者と地域をつなぐ架け橋となり、人口減少に歯止めをかけたいと考えています。

岩手県は厳しい課題を抱えていますが、豊かな自然、誇るべき文化、そして何より粘り強い県民性という大きな財産があります。岩手県庁職員として、地域に寄り添いながら、復興と地方創生の両立を実現し、次世代に誇れる岩手県を創りたいと強く願っています。

この例文は一つのモデルですが、重要なのは自分の言葉で語ることです。上記を参考にしつつ、自分自身の経験や思いを織り交ぜて、オリジナルの志望動機を作り上げてください。

まとめ

岩手県庁は、東日本大震災からの復興と人口減少という二つの大きな課題に向き合う、使命感とやりがいに満ちた職場です。

岩手県庁の特徴を整理すると:

  • 震災復興が今も続く最重要課題
  • 本州最大の面積を持つ広域県土
  • 農林水産業、ものづくり産業など多様な産業構造
  • 本庁と広域振興局を行き来する異動サイクル
  • 地域に密着した現場主義の仕事

公務員試験の勉強と並行して、自治体研究をしっかり行うことが合格への近道です。岩手県庁のホームページや各種報道、統計データなどを活用し、最新の政策動向を把握しておきましょう。特に、沿岸部を訪れて復興の現場を自分の目で見ることは、志望動機を深める上で非常に重要です。

志望動機を作る際は、「岩手県の地域課題」と「自分がやりたいこと」をしっかり結びつけることが大切です。単なる憧れではなく、具体的なビジョンを持って面接に臨んでください。

岩手県という、課題と可能性が共存するフィールドで、皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています。頑張ってください!

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